最新記事
トランプ

トランプ番組「衝撃の舞台裏」を元プロデューサーが暴露...「詐欺」への加担を悔やむ

THE LONG CON

2024年6月20日(木)15時43分
ビル・プルイット(テレビプロデューサー)
ドナルド・トランプと『アプレンティス』のバナー

『アプレンティス』はトランプを将来を見通せるリーダーに祭り上げた(番組のバナーとトランプ、2006年) FRAZER HARRISONーGETTY IMAGESーSLATE

<「おまえはクビだ!」の決めぜりふでトランプを全米に知らしめたリアリティ番組『アプレンティス』。その裏側を秘密保持契約から解放された元プロデューサーが打ち明ける>

ドナルド・トランプ前米大統領が、政界進出前に出演したリアリティー番組『アプレンティス』。若手ビジネスパーソンがトランプに雇われる「栄光」を獲得するべく競い合う内容で、ちょうど20年前の2004年1月8日に第1回が放送された。

「大富豪を紹介しよう」と題されたその回は、1800万人が視聴。その数はすぐに2000万人に膨れ上がり、第1シーズンの最終回には2800万人に達した。

エミー賞の「最優秀勝ち抜き番組賞」にノミネートされるなど業界の評価も高く、姉妹番組『セレブリティー・アプレンティス』と共に、10年以上にわたって米3大ネットワーク局NBCのゴールデンタイムに放送された。

同時にこの番組は、地元ニューヨークのタブロイド紙をにぎわせる薄っぺらい経営者だったトランプを、全米の大人も子供も一目置く著名経営者に押し上げた。

トランプの資産と地位と人格と野心について、大衆が誤解するよう巧みに誘導したわけだが、それがやがて全米を巻き込むペテンを助けることになろうとは、私たち制作者は思いもしなかった。

番組の制作に関わったプロダクションやテレビ局、それにキャストやスタッフなどで、意図的にこのペテンに関わった人間はいない。ただし、この番組が事実を、とりわけトランプの素性に関する事実を、いいかげんに扱ったことは間違いない。

私は『アプレンティス』全15シーズンのうち、第1シーズンと第2シーズンに関わった4人のプロデューサーの1人だ。全員が厳しい秘密保持契約(違反者には500万ドルの罰金が科されるなど)に縛られたが、その期間がようやく今年で切れた。

今秋の米大統領選でトランプが返り咲きを目指すなか、そしてトランプによる詐欺をめぐる裁判が進むなか、何が現在のトランプをつくったのかについて、私が知っていることを明かせる時がようやく来た。その一部には、今もぞっとさせられる。

リアリティー番組にも台本があるとよく言われるが、100%でっち上げのリアリティー番組はまずない。それでも、全てのリアリティー番組には捏造の要素がある。

現実をベースに特定の状況を演出し、それさえも現実であるかのように視聴者に錯覚させるのだ。ベースとなる背景が本物らしいほど、演出された状況も本物だと受け止められやすい。

このペテンのからくりは昔から存在する。16世紀に生まれた英語表現「袋の中の豚を買う(buy a pig in a poke)」がそれで、「中身を調べずに物を買う」ことを意味する。購入者(視聴者)がだまされたことに気が付くのは、ずっと後になってからだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場・寄り付き=S&P・ナスダック1%超安

ワールド

金総書記が北京到着、娘も同行のもよう プーチン氏と

ビジネス

住友商や三井住友系など4社、米航空機リースを1兆円

ビジネス

サントリー会長辞任の新浪氏、3日に予定通り経済同友
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 2
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 3
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シャロン・ストーンの過激衣装にネット衝撃
  • 4
    世界でも珍しい「日本の水泳授業」、消滅の危機にあ…
  • 5
    映画『K-POPガールズ! デーモン・ハンターズ』が世…
  • 6
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 7
    BAT新型加熱式たばこ「glo Hilo」シリーズ全国展開へ…
  • 8
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
  • 9
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 10
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 1
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 2
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 3
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 4
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 5
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 6
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 7
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 8
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪…
  • 9
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 10
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中