最新記事

東南アジア

ミャンマー軍政がコンサート会場空爆、60人死亡 少数民族武装勢力の支配地域で

2022年10月25日(火)17時51分
大塚智彦
空爆で瓦礫と化したコンサート会場

国軍の空爆で瓦礫と化したコンサート会場 Guardian News / YouTube

<反軍勢力が反撃できない空からの攻撃を強める──>

ミャンマー空軍が10月23日夜、北部カチン州にある少数民族武装勢力の支配地域で行われていた音楽コンサートの会場を空爆し、少なくとも60人が死亡、100人以上が負傷する惨事となった。

反軍政の立場から報道を続ける独立系メディアの「イラワジ」などが伝えたところによると、ミャンマー空軍の戦闘機3機が23日午後8時半ごろ、北部カチン州ハパカント近郊のギンシ村を夜間空爆した。

ギンシ村では当時、地元の少数民族武装勢力「カチン独立機構(KIO)」の創設62周年を祝う音楽コンサートが開催中で、空爆はその会場を直撃。戦闘機は会場の照明などを標的にしたものとみられている。

この空爆でKIOやその武装部門である「カチン独立軍(KIA)」の幹部やメンバー、観衆の一般市民らが死傷した。

著名カチン出身の歌手らも死亡

さらに投下された爆弾の1発がコンサート会場のステージ付近で爆発したため著名歌手のアウラリ氏や人気女性歌手のガラウ・ヨー・ルイさんらカチン出身の芸能人らが即死したという。

SNSには翌日の24日に撮影されたとみられる爆撃を受けたコンサート会場のばらばらになったステージの建物や観客席の写真がアップされ、ガラウさんらへの追悼の言葉が並んでいる。

KIOとKIAのスポークスマンであるナウ・ブー大佐は「軍は敵ではなく一般の住民を狙って攻撃した。これは邪悪な行為であり戦争犯罪である。国民の死を悼んでいる」と、軍による空爆を強く非難した。

空からの攻撃を激化する軍政

最近のミャンマーは、軍政が各地で武装市民組織「国民防衛軍(PDF)」や少数民族武装勢力の激しい攻撃にさらされて苦戦を強いられているという。

一部報道では国土の51%が反軍勢力の支配下になったとも伝えられ、軍政は反軍勢力の手が届かない空からの攻撃を強化している。

地上では軍の車列が反軍勢力の待ち伏せ攻撃で多数の死傷者を出したり、ドローンから爆弾を投下されるなど、国軍兵士の犠牲がこのところ増えている。

このためPDFや少数民族武装組織が保有していない戦闘機や戦闘ヘリコプターなどによる「空からの攻撃」や遠方からの砲撃を強化している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア製造業PMI、4月は54.3 3カ月ぶり低水

ビジネス

午後3時のドルは155円半ば、早朝急落後も介入警戒

ビジネス

日経平均は小幅続落、連休前でポジション調整 底堅さ

ビジネス

丸紅、発行済み株式の2.3%・500億円上限に自社
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 8

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 9

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中