最新記事

中国

G7「対中包囲網」で賛否両論、一時ネットを遮断

2021年6月16日(水)15時17分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)
英コーンウォールG7のバイデン米大統領

イギリスのコーンウォールで開催されたG7首脳会談に出席するため初外遊したバイデン大統領 Toby Melville-REUTERS

G7首脳会談では対中包囲網で意見が一致したと報道されているが、実は内部で賛否両論があり、会議室のネットを一時遮断するほどだったとCNNが暴き、中国はここぞとばかりにG7の矛盾を突いている。

中国はこれをアメリカが覇権にしがみつく「あがき」であり、一国では中国に対抗できないために他国に無理強いをしているとみなしている。

対中強硬論で意見が一致せず、会議室のネットを遮断

6月11日から13日までイギリスのコーンウォールで開催されたG7首脳会談は13日に閉幕し、「G7カービスベイ首脳コミュニケ」として共同声明を発表した。日本では「民主と自由と人権の勝利」であり、ついに「西側諸国が団結」して「対中包囲網を形成した」と勇ましく報じているが、実態はかなり違うようだ。

アメリカ時間6月12日のアメリカのメディアCNNは、「あまりの混乱と意見の不一致で一時会議室へのネットをすべて遮断する事態になった」と報じている。特に新疆ウイグル自治区西部での強制労働などの権威主義的な行為を行っている中国に対して、より強い行動をとるよう求めた米国、英国、カナダとヨーロッパ諸国の間で意見が対立したという。

EUを離脱したイギリスは、しばらくの間「中国に付くか、アメリカに付くか」で迷い漂流していたが、最近ではアメリカに近づくことにしたらしく、G7が始まる前に米英間の「新大西洋憲章」を結ぶなど、米英関係強化を鮮明にした。

中国の「環球時報」が飛びついた

中国はアメリカの大手メディアの情報をあまり直接転載はしたがらないが、CNNの情報をアメリカのリベラル系ニュースサイト「デイリー・ビースト」(The Daily Beast)が転載したので、中国共産党系の「環球時報」は「デイリー・ビースト」の報道を引用して、6月13日08:48に「米メディア:G7が中国に関して密談している時に会議室のネットが遮断された」という見出しで速報している。以下、その速報の概略を書く。

●バイデンは盛んに「アメリカは(国際社会に)戻ってきた」と叫んでいるが、G7のその他の国は対中問題に関してワシントンに「誘拐(連行)」されるつもりはない。

●そのため議論が紛糾し、外部に知られるとまずい状態にまでなったので、会議室に接続されている全てのインターネットを一時的に遮断した。

●特に新疆(ウイグル自治区)に関して強制労働が行われていることを、共同声明に書き込もうというバイデンの試みは強烈な反対に遭って達成できなかった。「デイリー・ビースト」はsquabble(言い争い)という単語を用いてこの状況を表現している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ヒズボラ、爆発の数時間前までポケベル配布=治安筋

ビジネス

米国株式市場=ダウ最高値、ナイキが高い フェデック

ビジネス

ボーイング、米2州で従業員の一時帰休開始 ストライ

ワールド

一部州で期日前投票始まる、米大統領選 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ニュースが分かる ユダヤ超入門
特集:ニュースが分かる ユダヤ超入門
2024年9月17日/2024年9月24日号(9/10発売)

ユダヤ人とは何なのか? なぜ世界に離散したのか? 優秀な人材を輩出した理由は? ユダヤを知れば世界が分かる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    世界で最も華麗で高額な新高層ビルに差す影
  • 2
    がん治療3本柱の一角「放射線治療」に大革命...がんだけを狙い撃つ、最先端「低侵襲治療」とは?
  • 3
    NewJeans所属事務所ミン・ヒジン前代表めぐりK-POPファンの対立深まる? 
  • 4
    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…
  • 5
    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…
  • 6
    浮橋に集ったロシア兵「多数を一蹴」の瞬間...HIMARS…
  • 7
    他人に流されない、言語力、感情の整理...「コミュニ…
  • 8
    口の中で困惑する姿が...ザトウクジラが「丸呑み」し…
  • 9
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 10
    ロシア防空ミサイルが「ドローン迎撃」に失敗...直後…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    クローン病と潰瘍性大腸炎...手ごわい炎症性腸疾患に高まる【新たな治療法】の期待
  • 3
    キャサリン妃とメーガン妃の「ケープ」対決...最も優雅でドラマチックな瞬間に注目
  • 4
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢…
  • 5
    世界で最も華麗で高額な新高層ビルに差す影
  • 6
    北朝鮮で10代少女が逮捕、見せしめに...視聴した「禁…
  • 7
    【クイズ】自殺率が最も高い国は?
  • 8
    エリザベス女王とフィリップ殿下の銅像が完成...「誰…
  • 9
    ロシア空軍が誇るSu-30M戦闘機、黒海上空でウクライ…
  • 10
    「ポケットの中の爆弾」が一斉に大量爆発、イスラエ…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンションは、10年後どうなった?「海外不動産」投資のリアル事情
  • 3
    年収分布で分かる「自分の年収は高いのか、低いのか」
  • 4
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレ…
  • 5
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン…
  • 6
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは.…
  • 7
    「あの頃の思い出が詰まっている...」懐かしのマクド…
  • 8
    止まらない爆発、巨大な煙...ウクライナの「すさまじ…
  • 9
    ロシア国内クルスク州でウクライナ軍がHIMARS爆撃...…
  • 10
    「ローカリズムをグローバルにという点で、Number_i…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中