最新記事
日本社会

年収分布で分かる「自分の年収は高いのか、低いのか」

2024年8月28日(水)11時15分
舞田敏彦(教育社会学者)
年収比較

50代男性では年収600万円は中央値を下回るが、同年代の女性では上位20~30%の間 78design/photoAC

<平均年収は一部の極端な数値に影響されるため、全体の中での位置付けを見るには年収分布の方が精度が高い>

自分の年収は高いのか、それとも低いのか――。関心を持っている人は多いだろう。ニュースで報じられる平均年収と比べる人が多いが、平均値は普通の目安を知る指標としては怪しい面がある。一部の極端な値に影響されるためだ。

ならば中央値はどうかというと、これとて全体のちょうど真ん中というだけで、この値と比較してどうか、という情報だけでは物足りない。全体の中のどの辺りか、上位20%に入るか......。こういうことも知りたいものだ。

そのためには、元データの分布に当たる必要がある。働く人の年収を知るのに最適な資料は、総務省の『就業構造基本調査』だ。雇用労働者ではないフリーランス等も含む全労働者の年収分布が出ているが、ここでは正規職員(正社員)に限定する。<表1>は、働き盛りの40代男性正社員の年収分布だ。

newsweekjp_20240828014139.png


中ほどが厚い標準的な分布だ。年収が分かる633万人のうち、最も多いのは年収400万円台。中央値(累積%=50)は、赤色の年収500万円台の階級に含まれることが分かる。按分比を使って、中央値を割り出すと以下のようになる。

・按分比=(50.0-41.7)/(57.6-41.7)≒0.5211
・中央値=500万円+(100万円×0.5211)=552.1万円

40代男性正社員の年収中央値は552万円。違和感のない数値だ。これは100人中50位(真ん中)の数値だが、100人中20位の値はどうか。上位20位の数値(累積%=80)は、青色の700万円台の階級に含まれる。先ほどと同じく按分比を使って算出してみる。

・按分比=(80.0-71.3)/(81.9-71.3)≒0.8203
・中央値=700万円+(100万円×0.8203)=782.0万円

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米ウ代表団、今週会合 和平の枠組み取りまとめ=ゼレ

ビジネス

ECB、利下げ巡る議論は時期尚早=ラトビア中銀総裁

ワールド

香港大規模火災の死者83人に、鎮火は28日夜の見通

ワールド

プーチン氏、和平案「合意の基礎に」 ウ軍撤退なけれ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果のある「食べ物」はどれ?
  • 4
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 5
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 6
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 9
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 10
    ウクライナ降伏にも等しい「28項目の和平案」の裏に…
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 5
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 6
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 9
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 10
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中