海外投資家が日本株売り 安倍退陣のスーパーテールリスク警戒も
ゼロではないリスク
一方、BNPパリバ証券・グローバルマーケット統括本部長、岡澤恭弥氏は、日本株が売られた理由は、トランプリスクだけではないと指摘する。「森友学園問題で、安倍首相退陣のリスクが、ゼロではないとの認識が広がった。プットオプションの仕込みもみられている」という。
海外勢が日本株に投資する大前提は、安倍政権の安定感だ。安定政権による強力なリーダーシップで金融政策と財政政策が、景気刺激的に同じ方向へ動くようコーディネートさせたところに、アベノミクスの本質があるとされる。
「もし安倍首相が退陣し、再び1年ごとに首相が交替するような時代に戻れば、政治のリーダーシップは失われ、日銀は金利の正常化、財務省は財政健全化に動くかもしれない。そうなれば海外勢は円高・株安材料と受け止める」と岡澤氏は話す。
アベノミクス相場で海外投資家は、2013年に日本株を約15兆6700億円買い越している。2014年は6967億円の買い越しに減速。15年は3兆2820億円の売り越しに転じた。16年も2兆1930億円の売り越しだ。
2013年をスタートとすれば、まだ8兆円強の買いが残っている。足元の日本企業の業績は過去最高水準で、これが一気にすべて巻き戻される可能性は大きくはない。しかし、円安による業績押し上げ効果は大きく、インバウンド消費などを含め、先行き不透明感は濃くならざるをえない。
不思議な国、ニッポン
現職の首相が辞めるパターンは、大きく3つ。内閣不信任案の可決、解散、そして自らの辞任表明だ。
現在、与党は衆参両院で3分の2の多数を占めている。よほどのスキャンダルが出てこない限り、与党の一部が内閣不信任案に賛成し、可決される可能性は低い。
解散も考えにくい。政治問題がくすぶる中で今、解散すれば議席を失う可能性は大きいためだ。過半数は維持したとしても自公全体で20議席を失えば、憲法改正発議に必要な3分の2議席を割り込んでしまう。