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独裁の悪夢を覚ますエジプトの怒り

Rage Against the Regime

ネット世代の怒りと新手の抗議が30年間にわたる堕落と抑圧を続けてきたムバラクの独裁体制を追い詰める

2011年02月02日(水)10時51分
ババク・デガンピシェ(ベイルート支局長)、クリストファー・ディッキー(中東総局長)、マイク・ジリオ

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[2011年2月 9日号掲載]

 エジプトと21世紀の世界をつなぐ通信インフラが1つ、また1つとダウンした。ツイッター、フェースブック、そして最後はすべてのインターネット接続が遮断された。ショートメールも使えなくなり、エジプト全土で無数の携帯電話が不通になった。

 それでも、先週初めから続く抗議行動と暴動は止まらなかった。高齢のホスニ・ムバラク大統領の退陣を求める無数の若者たちは、1月28日を「怒りの日」に定め、国中から支援者を集めた。その中には、政府から非合法化された後も強力な組織を維持する穏健派勢力のムスリム同胞団も含まれる。

 デモの予定時刻が近づくと、政府はあらゆる手段を使って民衆の分断を図り、外部の世界とのつながりを断とうとした。

 そしてデモ決行の時が来た。昼の金曜礼拝の直後、数万人がエジプト全土の街頭に繰り出した。当局は警棒とゴム弾で鎮圧にかかり、通りにはナイル川の朝もやよりも厚い催涙ガスの煙が立ち込めた。

 だが抗議の嵐はやまなかった。カイロでは、05年のノーベル平和賞受賞者で平和的な民主化を呼び掛けていたモハメド・エルバラダイ国際原子力機関(IAEA)前事務局長に治安部隊が放水を浴びせ掛けた。警官隊に包囲されたエルバラダイは支持者と共に1時間以上モスクに押し込められた後、当局の手で自宅に軟禁されたもようだ。

 カイロの他のデモ隊は警官隊の追跡を逃れながら、罵声と投石、時には火炎瓶を投げ込んで応戦した。これに対して警官隊は大量の催涙ガス弾を乱射。その一部はデモ隊の真ん中に着弾し、一部は川に沈んであぶくと煙を吐き出した。

 夕方になると2つの大人数のデモ隊がカイロ中心部のタハリール広場で合流。近くにはエジプト考古学博物館やインターコンチネンタル・ホテル、アメリカ大使館がある場所だ。

 ここで突然、警官隊が引き揚げ、代わりに軍隊が現れた。エジプト全土に午後6時以降の夜間外出禁止令が敷かれたのだ。

 実際のところ、軍の兵士は警官や治安部隊に比べ、民衆からの信頼がずっと厚い。だが、お目付け役が軍に交代した後も、デモが終わることはなかった。...本文続く

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