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テロ

9・11当時よりアメリカは安全だ

2010年9月13日(月)17時46分
ファリード・ザカリア(国際版編集長)

 いま問うべきなのは、アメリカのテロ対策が行き過ぎていないかという点だ。9・11テロ後に政府の権限を大幅に拡大したのは、正しいことだったのか。400人ほどしかメンバーがおらず、国際的な影響力も弱まっている組織に対抗するために、現在のような恒久的なテロ対策機関が本当に必要なのか。

 私はここ数年、この問いを投げ掛け続けてきた。08年には本誌の記事で、アメリカの「大いなる過剰反応」を指摘したが、ほとんど効果はなかった。

 ブッシュ政権時代、アメリカの左派は、この政権がテロ対策で有意義な行動を取れるのだと認めようとしなかった。しかしそれに輪を掛けて問題なのは、大量のイスラム教徒テロリスト(その多くはアメリカ国内にいるという)によりアメリカの安全が重大な脅威にさらされていると、右派が信じ込んでいることだ。

 脅威が差し迫っていると人々に思わせようというキャンペーンのせいで、社会の不安と怒りが高まっている。アメリカで暮らすイスラム教徒たちが疑いの目で見られるようになった。実は、アメリカのイスラム教徒ほど、社会に溶け込んでいるイスラム教徒コミュニティーは世界でも類がないのだが。

 いま起きていることは、まさにテロリストの思惑どおりだ。建物や船舶をいくつか爆破しても、アメリカを直接的に弱体化させることはできない。しかし、ビンラディンは計算していたはずだ。社会の過剰反応を引き出せば、アメリカが自分で自分の首を絞め始めるだろう、と。

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