最新記事

ヘルス

現役医師が断言「血液型と性格は関係ないし、自分の血液型を知る必要もない」

2023年1月7日(土)12時00分
名取 宏(内科医) *PRESIDENT Onlineからの転載
血液検査

baytunc - iStockphoto


日本では「A型は神経質」というふうに、血液型で性格を語られがちだ。内科医の名取宏さんは「昔、流行した『血液型人間学』という本が発端で確かな根拠はない。偏見や差別につながるし、嫌な思いをする人もいるだろうから気軽に話さないほうがいい。それに、自分の血液型を知っておく必要もない」という――。


「O型には大雑把な人が多い」のは本当か

ご存じのように、ABO式血液型では、血液はA型、B型、O型、AB型の4タイプに分けられます。以前、その血液型と性格は関係しているという説を、会話のきっかけにする人がたくさんいました。たとえば「A型は神経質で真面目な性格だ」「O型には大雑把(おおざっぱ)な人が多い」「B型の人の性格はマイペース」「AB型は変わり者ばかり」などといった感じです。

こうした主張が日本で信じられていたのには、1970年台に『血液型人間学』と称する一般書がベストセラーになったという背景があります。たいていの人は誰でも大雑把な部分を持っていますから「O型のあなたは大雑把な性格ですね」などと言われると、血液型に関係なく当たったように感じるものです。血液型と性格の関連を正確に知りたいのであれば、こうした思い込みを排した科学的な研究が必要です。ところが、これまでの研究では血液型と性格の強い関連は示されていません(※1)。血液型人間学や血液型診断などは「科学」ではなく「占い」の類いです。

今では考えられないことですが、血液型人間学ブームのころには、血液型を教育や人事に活用する事例すらありました。仮に「O型には大雑把な人が多い」のが事実だとしても、目の前にいるO型の人が大雑把かどうかはわかりません。それなのに、O型だからと大雑把な人に向く仕事を割り振るのは、偏見に他なりません。血液型人間学が科学であろうとなかろうと、血液型によって扱いを変えるのは差別なのです。

※1 『パーソナリティー研究』2006 第15巻 第1号 p33-47「擬似性格理論としての血液型性格関連説の多様性

血液型で性格を決めつけるのは「ブラハラ」

私は、日常生活で血液型を話題にするのも避けたほうがいいと考えます。その場にいる全員が、血液型の話題で楽しめる保証はないからです。むしろ、「O型だから大雑把だよね」などと決めつけられることにウンザリしているけれど、その場の雰囲気を壊さないように空気を読んで、話を合わせている人が多いかもしれません。

これがたとえば、肌の色や出身地で性格を決めつけるような話題だったら、誰にでもいけないことだとわかるでしょう。血液型人間学や血液型性格診断も同じこと。「ブラッドタイプ・ハラスメント(ブラハラ)」という言葉もあるくらいです。

「今までは証明できなかっただけで、将来的に血液型と性格の関連が証明される可能性はゼロではない」という意見もあります。その意見は間違っていないのですが、「血液型人間学は科学ではなく占いの類いである」という結論には変わりありません。血液型と性格の関連は存在しないか、存在したとしてもきわめて弱いものです。人間関係に役立つほどの強い関連が存在するならば、とっくに実証されているからです。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

英外相、ウクライナ訪問 「必要な限り」支援継続を確

ビジネス

米国株式市場=上昇、FOMC消化中 決算・指標を材

ビジネス

NY外為市場=円上昇、一時153円台 前日には介入

ワールド

ロシア抜きのウクライナ和平協議、「意味ない」=ロ大
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 10

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中