最新記事

教育

数字に驚異的に強いインドと日本の子供たち、放課後にしていたこととは?

2023年1月2日(月)11時46分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
少年

VikramRaghuvanshi-iStock

<数字の記憶と暗算の能力が高く、数学の国際コンテストを総なめするインドと日本をはじめとする東アジアの子供たち。しかし、実は知能とは関係ないという......。なぜ数字に強いのか?>

ライオンにクジラ、鳥や魚、カエルや昆虫まで数を数えることができる......。人間だけでなく、あらゆる生物が「数」を把握できることを学問的に迫った、話題書『魚は数をかぞえられるか? 生きものたちが教えてくれる「数学脳」の仕組みと進化』(講談社)より抜粋する。

◇ ◇ ◇


日本とインドの子どもの数的能力

驚異的なのは、日本、中国、台湾、インドの多くの子どもたちの数的スキルだろう。彼らは、たいてい放課後の塾などで、徹底的に算盤(そろばん)の訓練を受けていた。何年にもわたって何百時間も計画的に訓練を積む子もおり、その多くは競技大会での成功を目指している。

そうした訓練をしばらく続けると、算盤自体が必要なくなり、むしろ邪魔になり始める。熟練者は、頭の中の算盤を使うのだ。

「フラッシュ暗算大会」と呼ばれる競技大会では、出場者は提示された数字を足していくのだが、記憶して処理するどころかほぼ読めないようなスピードで数字がどんどん提示されていく。英国の作家アレックス・ベロスの著書『Alex's Adventures in Numberland(未邦訳:数字の国のアレックスの冒険)』から、一例を紹介しよう。

子どもたちが画面を見つめている。ピーッという予告音が3度鳴ると、下記の数字がものすごい速さで表示されていくので、熟練した数学者のアレックスにもほとんど読めなかった。

164 597 320 872 913 450 568 370 619 482 749 123 310 809 561

最後の数字がさっと映し出された瞬間に、一人の学生が「7907」と解答した。

2012年の世界チャンピオン、小笠原尚良は、0.4秒間ずつ表示される15個の4桁の数字を正確に足し算した。私の知る限り、こうした驚くべき偉業がどのように達成されるのかを、認知理論的に、あるいは、脳機能的に調べた科学研究は存在しない。

頭の中の算盤を使う能力の興味深い特性の1つは、数に関係のない課題なら、並行してもう1つ、こなせる点だ。

アレックスのユーチューブチャンネルでは、9歳の女の子たちが難しい言語ゲームをしながら、20秒間にすばやく連続表示される30個の3桁の数字を足し上げていた。つまり、計算は、ほかの認知機能とは別の思考プロセスであることがわかる。

さて、こうした数にまつわる驚くべき偉業は、知能や記憶力のような天賦の才能によるものだ、と思うかもしれない。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米ISM非製造業総合指数、4月は49.4 1年4カ

ビジネス

米4月雇用17.5万人増、予想下回る 賃金伸び鈍化

ワールド

欧州委、中国EV3社に情報提供不十分と警告 反補助

ビジネス

米4月雇用17.5万人増、予想以上に鈍化 失業率3
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 7

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 8

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    元ファーストレディの「知っている人」発言...メーガ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中