最新記事

メンタルヘルス

うつ病と燃え尽き症候群はまったく違うのに、見当違いな治療が蔓延している

2020年11月11日(水)16時15分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

fizkes-iStock.

<うつ病と燃え尽き症候群は同じ? 一度なったら何度も再発する? 抗うつ薬は効く? ドイツで著書が高く評価される臨床心理士のクラウス・ベルンハルトは、最新の科学的知見に基づき、従来の治療法に異議を唱える。うつ病や燃え尽き症候群も、自分で断ち切ることができるというのだ>

「コロナ禍」という表現がもはや日常を指すものとなりつつある今、いつまでも先行きが見通せないことに大きな不安を抱えている人、あるいは長年にわたる不安障害に苦しんできた人たちから、大きな支持とたくさんの感謝が寄せられている本がある。

脳科学に基づく画期的なトレーニング「ベルンハルト・メソッド」によって、不安を自分の手で解決することを説いた『敏感すぎるあなたへ――緊張、不安、パニックは自分で断ち切れる』(クラウス・ベルンハルト著、平野卿子訳、CCCメディアハウス)だ。

2018年に出版された邦訳はアマゾンで80以上の評価が付き、星5つ中の4.2という高い評価。ドイツ語の原書に至っては、ドイツのアマゾンで1000以上の評価、星4.4となっている(参考記事:暴露療法は逆効果、不安を自分で断ち切るドイツ発祥の革新的メソッドとは?)。

著者は最新刊『落ち込みやすいあなたへ――「うつ」も「燃え尽き症候群」も自分で断ち切れる』(同)で、うつ病や燃え尽き症候群も自分で断ち切ることができると説く。

そのためにもまずは、あなたがうつなのか、それとも燃え尽き症候群なのかを正確に区別することが重要だと強調する。原因がまったく異なるこの2つに対し、いまだに見当違いな治療が広く行われている上、特に後者には抗うつ薬はほぼ意味がないのだという。

原因を突き止めようとせず、症状だけを抑え込もうとしてはいけない

不安やパニック、うつや落ち込みには脳が関わっている。ヒトの脳については、かつては成人した後は一生変わらないとされていたが、現在では、死ぬまで変わり続けることが分かっている。言い換えると、脳を書き換えることで、人は死ぬまで変わることができるのだ。

臨床心理士である著者は、こうした最新の科学的知見に基づき、従来のやり方がいかに的外れかを指摘する。その上で、実践的で効果の高い療法を提唱し、多くの人が健全で健康な日々を取り戻す手伝いをしている。

そんな著者自身、若い頃に深刻なうつ病に苦しんだ経験を持つという。さらに、40代になってから重度の燃え尽き症候群になったことも告白している。どちらの場合も医師に勧められた療法が合わず、自分の直感を頼りに落ち込みから抜け出したという。

著者のように、うつ病や燃え尽き症候群から抜け出すことができた人はたくさんいる。一方、さまざまな治療法を試しても効果がないという人も多く、また、一度なったら何度でも再発すると言われることもあるが、「決してそんなことはない」と著者は断言する。

時には、ある食品を控えただけでうつが完全に消えた例もあるというが、多くの場合、原因はひとつではなく、数多くの小さな誘因が複雑に絡み合っている。それらは、個別に見ると無害であることが多いため、治療において見落とされやすいのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 

ビジネス

米地銀リパブリック・ファーストが公的管理下に、同業

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、22年2月以来の低水準
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ」「ゲーム」「へのへのもへじ」

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 6

    走行中なのに運転手を殴打、バスは建物に衝突...衝撃…

  • 7

    ロシア黒海艦隊「最古の艦艇」がウクライナ軍による…

  • 8

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 9

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中