最新記事

株式市場

史上3度目の上昇相場がやってくる

株より債券が儲かる異常事態に財政インフレが重なれば、歴史的な買いどきだ

2009年7月16日(木)18時17分
バートン・ビッグズ(トラクシス・パートナーズのマネジングパートナー)

株の復権 リスクを取る株式投資家こそが、アメリカをアメリカたらしめてきた Chip East-Reuters

 先ごろ筆者が、大手金融機関の著名なトレーダーたちが集う夕食会に出席したときのこと。出席者の半分くらいは、世界の株式市場は今後2年の間に再び安値を更新すると考えていた。

 アメリカや世界の株式市場で強気相場が復活するにはかなりの時間がかかるというのは衆目の一致するところだ。それどころか、ダウ工業株30種平均が500~1000ドルの間をさまよい続けた66~82年にかけての時期に似た、長く厳しい低迷期となる可能性もある。

 世界が直面する金融・経済の諸問題を考えると、こうした悲観的な見方は正しいように思える。だが、筆者はあえて異を唱えたい。

 ワインが進んで舌が滑らかになってくるなか、出席者の間ではあるコンセンサスが出来上がった。先進国の経済成長率は年1~2%止まりで、今後5年間のアメリカ、欧州、日本における株式の運用利回りはよくても年率5%前後だろう――。

 新興市場ならもっと急速な経済成長と年率10%くらいの運用益が見込めると言う人々もいた。だが、米国株で4~6%の収益率しか見込めない以上、新興市場に大きな期待をするのは非現実的だという見方のほうが優勢だった。発展途上国の経済は、先進国への輸出に過度に依存しているケースが多いからだ。

利回りは債券運用>株式投資?

 だが検討してみるに値するシナリオがもう1つある。

 世界の代表的な株式市場はどこも、近年まれに見る低迷期にある。運用利回りを債券市場と比較した場合もそうだし、株価の動きを見てもそうだ。

 アメリカの場合をみてみよう。09年1~3月期までの5年間、10年物米国債は年平均6.2%の利益を生んだのに対し、スタンダード&プアーズ(S&P)500社株価指数で運用した場合は年4.8%のマイナスだった。

 過去10年間でみても、債券の利回りが年平均6.8%だったのに対し、株式の運用利回りはマイナス3%。20年、30年というスパンで見ても、株式よりも債券のほうがすぐれた運用実績を残している。

 過去10年間の世界の代表的な市場をみても、株式の運用利回りは軒並みマイナスを記録。アメリカではS&P500の銘柄を運用して得られる利益(インフレ調整済み)は、10年前の水準から50%も下落している。それとは対照的に、債券はこの10年、地道に利益を上げてきた。

 つまりこの30年間、株主になるより金を貸す(つまり政府や企業が発行する債券を買う)ほうが儲かる時代が続いているのだ。こんなことでは資本主義に未来はない。1831年、フランスの思想家アレクシス・ド・トクビルはこう書いた。アメリカを偉大たらしめているのは民主制と人々の起業家精神だ――。

大恐慌のどん底から始まった大相場

 債券で堅実に運用している投資家のほうが、株式でリスクを冒す投資家よりもたくさん稼ぐ状態が続くなどありえない。株への投資は経済成長の源泉であり、長い目で見れば株はかなりの(債券よりもはるかに大きな)利益を生み出すはずだ。

 実際、20世紀を通してアメリカでは、株式運用の実質利回りは年平均6.9%だったのに対し、債券では1.5%に過ぎなかった。

 同じことは他の国々でも言える。イギリス、カナダ、そして大半のヨーロッパ諸国でも、長期的に見た株式の運用利回りは国債を5%ほど上回った。オーストラリアやドイツ、日本では株式の利回りは債券を約7%上回った。

 株式の利回りが債券の利回りを下回るとともにインフレ率が上昇したら、それは株の買いどきだ。アメリカでも過去に、32年の第2四半期と49年の第3四半期の2回しかない稀有なチャンスなのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国当局、空売りの抑制強化へ 大株主の違法売却に厳

ビジネス

中国5月指標は強弱交錯、弱い鉱工業生産 好調な小売

ワールド

スウェーデンとイラン、オマーンの仲介で受刑・拘束者

ビジネス

中国新築住宅価格、5月は前月比-0.7% 約9年半
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:姿なき侵略者 中国
特集:姿なき侵略者 中国
2024年6月18日号(6/11発売)

アメリカの「裏庭」カリブ海のリゾート地やニューヨークで影響力工作を拡大する中国の深謀遠慮

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    この「自爆ドローンでロシア軍撃破の瞬間」映像が「珍しい」とされる理由

  • 2

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア

  • 3

    FRBの利下げ開始は後ずれしない~円安局面は終焉へ~

  • 4

    顔も服も「若かりし頃のマドンナ」そのもの...マドン…

  • 5

    森に潜んだロシア部隊を発見、HIMARS精密攻撃で大爆…

  • 6

    水上スキーに巨大サメが繰り返し「体当たり」の恐怖…

  • 7

    なぜ日本語は漢字を捨てなかったのか?...『万葉集』…

  • 8

    中国経済がはまる「日本型デフレ」の泥沼...消費心理…

  • 9

    米フロリダ州で「サメの襲撃が相次ぎ」15歳少女ら3名…

  • 10

    米モデル、娘との水着ツーショット写真が「性的すぎ…

  • 1

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア

  • 2

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車の猛攻で、ロシア兵が装甲車から「転げ落ちる」瞬間

  • 3

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思っていた...」55歳退官で年収750万円が200万円に激減の現実

  • 4

    米フロリダ州で「サメの襲撃が相次ぎ」15歳少女ら3名…

  • 5

    毎日1分間「体幹をしぼるだけ」で、脂肪を燃やして「…

  • 6

    この「自爆ドローンでロシア軍撃破の瞬間」映像が「…

  • 7

    カカオに新たな可能性、血糖値の上昇を抑える「チョ…

  • 8

    「クマvsワニ」を川で激撮...衝撃の対決シーンも一瞬…

  • 9

    認知症の予防や脳の老化防止に効果的な食材は何か...…

  • 10

    堅い「甲羅」がご自慢のロシア亀戦車...兵士の「うっ…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア

  • 4

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「…

  • 5

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

  • 6

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 7

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 8

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 9

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思ってい…

  • 10

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中