コラム

年明けの都知事選、どうして盛り上がらないのか?

2013年12月24日(火)11時27分

 別にニューヨークの市長選にしても、カリフォルニアの知事選にしても、ゴシップあり、タレント候補あり、泡沫候補のパフォーマンスあり、金権選挙ありで、そんなに立派なものではありません。ですが、今回の都知事選の「盛り上がりのなさ」には、どうしても違和感を覚えてしまうのです。

 そもそも今回の「猪瀬失脚劇」自体が良く分かりません。徳洲会関係の献金が、東電病院の買収に絡む悪質な汚職であれば、入札の透明性確保へ向けた改革が必要ですが、そうした動きはあまり聞かれません。漠然と「アクの強い作家知事の自滅劇」という「人間ドラマ」を消費し、やり過ごしたという以上でも以下でもない。現時点ではそんな印象があります。

 それどころか、次の都知事選自体についても「著名人の顔ぶれ」であるとか「後出しが有利」などという「人間ドラマ」として楽しみ、消費してやり過ごそうという「盛り上がりに欠ける姿勢」がミエミエです。

 では、東京には何の問題もないのでしょうか?

 そんなことはありません。現在進行形のテーマとしては、東京への一極集中がますます加速しているという問題があります。学生は就活の機会が多いからと東京に集まり、企業は人材確保のためと東京の機能を拡大する。そうした循環の結果として、一極集中は更に激化しているわけです。

 東京が日本経済を牽引している一方で、東京の繁栄が地方の経済を毀損している部分もあるわけで、このままこうした一極集中を続けて行っていいのかというのは、東京だけの問題ではないですが、間違いなく東京の問題でもあります。また、リスクマネジメントの観点からも、一極集中の弊害は明らかです。仮に首都直下型の震災が起きた場合には、日本全国が大きな社会的、経済的なダメージを受けることになるからです。

 また将来的な問題としては「2020年以降」の東京では、地方に遅れて人口の「巨大な高齢化の塊」が出現する、そうした人口動態の歪みをどうするのかという問題があります。その時に、東京は経済の活力を保ちながら「東京の高齢化を支えていく」ことが可能なのかという議論も必要です。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

機械受注3月は前月比2.9%増、判断「持ち直しの動

ビジネス

あと数カ月インフレ鈍化を確認する必要=米クリーブラ

ビジネス

日経平均は続落で寄り付く、米エヌビディア決算前に持

ワールド

プーチン氏、死去のイラン大統領称賛 下院議長に弔意
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 3

    「目を閉じれば雨の音...」テントにたかる「害虫」の大群、キャンパーが撮影した「トラウマ映像」にネット戦慄

  • 4

    9年前と今で何も変わらない...ゼンデイヤの「卒アル…

  • 5

    ベトナム「植民地解放」70年を鮮やかな民族衣装で祝…

  • 6

    服着てる? ブルックス・ネイダーの「ほぼ丸見え」ネ…

  • 7

    高速鉄道熱に沸くアメリカ、先行する中国を追う──新…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    「韓国は詐欺大国」の事情とは

  • 10

    中国・ロシアのスパイとして法廷に立つ「愛国者」──…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 8

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 9

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 10

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story