最新記事
SNS

SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

Keep Your Dreams!

2024年5月18日(土)11時16分
アンソニー・マドゥ(バレエダンサー)
ドキュメンタリー映画『マドゥ バレエ少年の夢』

英国のバレエ学校で練習に励む(映画『マドゥ バレエ少年の夢』より) DISNEY

<雨の中で裸足でバレエを踊る動画がSNSでバイラルになった、ナイジェリア版『リトル・ダンサー』の輝ける未来>

私が踊りに夢中になったのは、ナイジェリアに住んでいた5歳くらいのときだ。とにかく踊ることが好きだった。バレエを初めて見たのは、母のスマートフォンで、いろいろな踊りの動画を見ていたときだ。すごくかっこよくて、まさに私がやりたい踊りだと思った。そこでバレエ教室に行ってみたらとても楽しかったので、続けることにした。

■【動画】SNSで大きな話題になった「雨の中でバレエを踊る」マドゥの動画/映画化された『マドゥ バレエ少年の夢』

2020年6月、雨の中でバレエを踊る私の動画がソーシャルメディアでバイラルになるまで、私の日常はごく平凡なものだった。相変わらず踊りに夢中で、放課後と週末はバレエ教室に通っていた。

あの動画は偶然撮影されたものだ。あの週はとても忙しかったから、レッスンは休もうと思っていた。でも、やることもなくて退屈だったから、やっぱり行くことにした。

教室の外で練習をしていたら、ちょっと録画しようということになった。それを先生がインスタグラムに投稿したところ、世界中に拡散されることになった。全く予想外のことで、私も家族も友達もびっくりしたけれど、母がとても誇りに思ってくれていることは分かっていた。

やがて、英バーミンガムにあるエルムハースト・バレエスクールで、本格的にバレエを学べることになった。踊りは楽しかったけれど、家族と離れて暮らすのは大きな変化だった。天気もナイジェリアとは大きく違った。

「男がバレエをする」ことへの批判や偏見を乗り越えて

当初は家族が恋しくて、しょっちゅうメッセージを送ったり、電話をかけたりしていた。でも、寂しいからといって落ち込まないように努力した。「しっかりしろ。バレエをやるためにここに来たんだろう。ずっとやりたかったこと、自分で選んだことじゃないか。それに(大きな変化に)うまく対処しているぞ」と、自分を奮い立たせてきた。

幸い、私はとても良い人たちに囲まれている。2学年上のアンドレは仲の良い友達で、私がホームシックになったときはいつも助けてくれる。ただ非常に難しいのは、ネガティブなコメントに耳を貸さないようにすることだ。

バレエを始めたとき、多くの人がけげんな顔をした。バレエなんて男がやることではないし、特にナイジェリアではあり得ないというのだ。学校の友達も、私と話をしてくれなくなった。そのせいで、自分はどこかおかしいのではないか、バレエをやめるべきなのかと思った時期もあった。とても孤独だった。

でも、母が私の味方をしてくれた。いつも私を励まし、ずっとやりたかったことなのだから、いま諦めてはいけないと言ってくれた。だからなんとか立ち直ることができた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ドイツ自動車対米輸出、4・5両月とも減少 トランプ

ワールド

米農場の移民労働者、トランプ氏が滞在容認 雇用主が

ワールド

ロシア海軍副司令官が死亡、クルスク州でウクライナの

ワールド

インドネシア中銀、追加利下げ実施へ 景気支援=総裁
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 6
    ワニに襲われた直後の「現場映像」に緊張走る...捜索…
  • 7
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 8
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 9
    吉野家がぶちあげた「ラーメンで世界一」は茨の道だ…
  • 10
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 3
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 4
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギ…
  • 5
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 6
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 10
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 7
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 8
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 9
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 10
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中