コラム

「コロナ後」ロンドンで(細かすぎる)再発見

2022年04月27日(水)17時50分

がっかりしたのは、ウォーターボトルに水を詰め替えるのが今もまだとんでもなく大変なこと。数年前には、ペットボトルなど「使い捨てプラスチック容器」に対する関心が急速に高まった。使い捨てプラスチックは2018年の「今年の言葉」に選ばれたほど。みんなこう言ったものだ。「マイボトルを持ち歩いて補充しよう!」

僕は既に20年以上もこれをやっていたから、これでやっと、あいつは変わり者だとか、ほんの小さな水のペットボトルを買うのを「ケチっている」などと見られずに済むと喜んだ。しばらくの間、この習慣は定着しつつあるように見えた。人々は小さなボトルを持ち歩き始めた(まるでファッションであるかのようにこれ見よがしに)。より多くの水飲み場を設置する計画が策定され、公平を期すために言うと、一応いくつかは増設された。でも勢いは失速してしまっているようだ。

先日僕は、とても長い距離を歩いて(グリニッチまでの約20キロだ)、その道すがら一度も給水所にありつけなかった。迂回してハイドパークの水飲み場に寄ることもできただろうが、きっとほかにも水飲み場はあるだろうと考えて道は変えなかった。僕は何万人もが行き交う場所を歩道に沿って歩き、ロンドン中心部を通り抜けた。

再び観光客が押し寄せるロンドン

やっと1つ、水飲み場に通りかかったが、水は出なかった(「一時的に使用を中止しています」という表示もない)。僕にとっては、こう言われているも同然だった。「水はありません。だから何? そこの店で買えば?」

そしてもちろん、水のペットボトルを売る店は30かそこらは目にした。犬用の水場でさえ2カ所もあった。

結局、テムズ川南岸の劇場が入った建物に寄って、スタッフにどこかに給水場はないかと聞いた。彼らは親切にも、中のカフェが無料で水を詰めてくれると教えてくれた。でもそのためにはセキュリティーチェックを通らねばならず、手荷物検査まで受けた......。取るに足らない不便だが、プラスチックごみ削減はそう簡単には進んでいないようだと、僕はつくづく実感した。

プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ソニー、米パラマウントに260億ドルで買収提案 ア

ビジネス

ドル/円、152円台に下落 週初から3%超の円高

ワールド

イスラエルとの貿易全面停止、トルコ ガザの人道状況

ワールド

アングル:1ドルショップに光と陰、犯罪化回避へ米で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story