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五輪開催の是非、コロナ分科会に諮問しない ── 安倍政権以来の悪弊続く
東京オリンピック・パラリンピック開幕まであと50日(6月3日、お台場) Issei Kato-REUTERS
<憲法学者の大半が違憲と言ったのに強行採決された安保法案、菅政権発足直後の学術会議への人事介入など、科学的知見を無視し続ける為政者を許容してはならない>
6月2日、衆議院の厚生労働委員会で、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長が、東京オリンピックの開催について「今の状況で普通はない」と発言した。その上で尾身会長は「やるということなら、開催規模をできるだけ小さくし、管理体制をできるだけ強化するのが主催する人の義務だ」「こういう状況の中でいったい何のためにやるのか目的が明らかになっていない」などと発言した。東京のいくつかの会場で予定されている五輪のパブリックビューイングについても、否定的な考えを示した。
尾身会長は、オリンピックを中止すべきだとはっきり主張したわけではない。しかし2日の発言は、これまでの発言と比べて、オリンピック開催問題について、より踏み込んだコメントだとみられている。
与党政府関係者は、この発言に強い不快感を示している。田村厚生労働大臣は、この発言を「自主的なご研究のご成果の発表」だったと述べ、分科会からの正式な提言として認めない姿勢を示した。
少しずつ自己主張を始めた分科会
昨年の尾身会長は、全体的に政府の方針に忖度するような態度が目立っていた。例えば政府が推進するGoToキャンペーンに対しては2020年7月、「旅行自体に問題はない」などとコメントし、追認する姿勢を見せていた。
しかし、昨年末頃からは、GoToの見直しを主張するなど少しずつ自己主張を始めだしている。5月には、感染が拡大する北海道に緊急事態宣言を出すことに消極的な政府に対して、分科会は緊急事態宣言を提言し、実施されることになった。
遅きに失したと言わねばならないが、ここにきてコロナ分科会および尾身会長は、少しずつ専門家として自立的な発言をするようになっている。報道によれば、分科会の中では、尾身発言よりもさらに強く、オリンピック開催に否定的な声も出始めているという。
科学的知見を邪魔にする政府
コロナ分科会の自己主張が強くなっていくにつれて、政府は分科会を軽視し始めるようになった。前述の田村厚労相の「自主的なご研究のご成果の発表」発言は典型的だ。分科会長の立場で国会において発言した内容が、「自主的なご研究」のそれであるわけがない。
また丸川五輪担当相は、同発言を受けて「私はスポーツの持つ力を信じてきた」と、全く返答になっていない精神論で返した。科学的知見などどうでもよく、専門家会議は常に政府を忖度して提言を行うべきだと、この国の政権担当者たちは思っているのだ。
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