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カナダからの呟き

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カナダが疑問に思う東京オリンピック・パラリンピック

iStock - Joel Papalini

前回『カナダで殆ど報道されず話題にも上らない東京オリンピック・パラリンピック』を書いたのが31日。

あれから3ヶ月、カナダでも東京オリンピック・パラリンピックの報道は増加した。その殆どが「開催されるか否か」「安全か否か」だ。

既に大会まで2ヶ月を切っているのに、いまだに開催されるかどうか安全かどうかがuncertain(不確実)なのだ。

カナダでも「パンデミックなのにオリンピックをするのか?」という疑問と葛藤が存在している。

2020年3月、ICOのアスリート委員であるヘイリー・ウィッケンハイザー氏(6回オリンピックに出場し金メダルを4個持つ元アイスホッケー選手。2021年5月にメディカルコースを修了し'ドクター'となった)は自身のtweetで「この危機(コロナ禍)はオリンピックより巨大です」「IOCがオリンピックを強固に進めると主張しているのは、人類の今の状況を考えると無神経で無責任なことだと思います」と述べ開催延期のきっかけを作った。しかし、IOCや周囲はこの彼女の発言に「ハッピーではなかった」らしい。

陸上競技のチャールズ・フィリベルト=ティブートット選手はウィッケンハイザー氏の発言を受けて「人々は、本当に打撃を受けている。事業を営んでいる人たち、解雇される人たち... それなのにIOCは『まだ大会を開催する』と言っている。無神経だと思う」、「もっと大きな問題は、人々の健康や安全をIOCはあまり配慮していないところだ。選手は苦労しているが、私たち以上に苦労している人はたくさんいる」と選手という立場でありながら、コロナの危機に際してオリンピックは最優先されるべきではないことを指摘。[参照: 'Insensitive and irresponsible': Hayley Wickenheiser calls out IOC decision on Olympics]

結果としてカナダIOCが「2020年の夏に予定通りに開催されるのであれば参加しない」と発表、これに賛同する国が現れ、開催延期の運びの糸口となった。

そして2021年の4月、再びヘイリー・ウィッケンハイザー氏は「オリンピックの決定は、IOCではなく(オリンピックの利権に関わらない)医療の専門家であるべきだ」と発言。大会に注ぎ込まれたトレーニング、準備、資金は理解できるが、最終的には「安全性と公衆衛生を重視すべき」、「大会を開催するのであれば、非常に明確で透明性のある説明がなされるべき」とCBC(カナダの公共放送局)に語っている。[参照: Hayley Wickenheiser again sounds alarm, saying wrong people making decision on Olympic Games]

5月19日にはトロント大学の感染症疫学者であるコリン・ファーネス氏は「世界的なパンデミックの際の最悪な行動は、世界中から大勢の人が一箇所に集まり、密集して混ざり合い、また戻ってくることだと思います」と発言。[参照: 'Risks just too high': Calls grow to cancel Tokyo Olympics amid Japan's COVID-19 surge] オリンピック開催は、まさにこの『最悪な行動』に当てはまる。

つまり、カナダはパンデミックの中でオリンピックを行うことにかなり懐疑的だ。

一方でIOC委員のディック・パウンド氏は、IOC会長のトーマス・バッハ氏が6月の日本訪問を中止したにもかかわらず、「東京オリンピックは予定通り開催される」と述べている。[参照: IOC's Dick Pound says Tokyo Olympics to move ahead despite pandemic concerns]

同じIOCでもアスリートから選抜されたICOアスリート委員でありヘイリー・ウィッケンハイザー氏は医学の知識とサイエンスに基づき人々の健康と命のリスクを考慮した発言をしている。一方で、古参IOC委員のディック・パウンド氏は「菅首相が中止求めても開催」「アルマゲドンない限り五輪開催」など傲慢な発言を繰り返している。まさに対極である。カナダで圧倒的支持を誇るのはヘイリー・ウィッケンハイザー氏だ。日本では森元会長を辞任に追い詰める一端となったtweet「この人を絶対に追い詰める」が有名。同時に彼女の『政治的意図を無視する姿勢』は利権絡みの人々からは疎まれやすい。ディック・パウンド氏のオリンピック強行開催発言はカナダ国内でさえ「傲慢なIOCの象徴」「カナダの恥さらし」と嫌悪感を示す人が多かった。一方で彼の発言はIOCの横柄さを表しているのでメディアには重宝されているように思う。

5月中旬に行われた東京オリンピックに対するカナダの世論調査によれば、「東京オリンピックにカナダの選手は出場すべきではないと思う」と答えた人は42%、「参加すべきだ」と答えた人は39%だった。「東京オリンピックへの出場は安全だと思うか」という質問に対しては、46%の人が「いいえ」、35%の人が「はい」、19%の人が「わからない」と回答。『行くと決めても、行かないと決めてもOK』という『どうでもいい』感が漂う結果となった。調査を実施した会社は結果にショックを受けたことを認め「オリンピックはテレビで大きな視聴率が取れるので、オリンピックを楽しもうという意欲がもっとあると思っていた」と語っている。[参照: Canadians divided on sending Olympic athletes to Tokyo: poll]

カナダ国内でもオリンピックに対する情熱や熱狂が滑り落ちてしまっている状況を感じずにはいられない。

さてカナダが日本に対して抱く大きな疑問が幾つかある。

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カナダに棲む女。食事においての最後の一品は自分が食べたい。寒がりなのにカナダに移住。英語が苦手なのにカナダに移住。フランス語が喋れないのにカナダに移住。

著書、『毒の滴』が販売中です。

ブログ:毒の滴(したたり)

Twitter: @poisondrop333

Instagram: drippingofpoison

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