コラム

「支える人を支えたい」慢性疾患の重症化予防ベンチャーに参画した研究者 小坂志保

2016年03月08日(火)17時10分

 小坂氏は言う。「患者中心の医療とよく言われますが、何かその言葉に違和感を感じてきました。真ん中にはあるべきなのは、患者さんお一人ではなくその患者さんやご家族とともに考える共通の目標じゃないのかなと思うんです。共通の目標を核にしたサークルがあり、患者さんもそのサークルのメンバーの1人。患者さん・ご家族・医療者それぞれが適材適所の強みを発揮できる、そんな新しい医療、ヘルスケアの形を作っていきたいと思っています」。

 病気は治すことがゴールであると思いがちだが、慢性疾患は安定した状態を保ち、悪化しないことも重要な目標でありゴールともなりうる。そのため目標までの道のりが遠く、ゴールがなかなか見えてこない時もある。しかしその過程で、家族の絆という思わぬ贈り物を手にできるかもしれない。そして絆というサークルができれば、病状の改善・重症化予防というゴールもさらに近いものになるだろう。

【参考記事】ロボットを通じてALS患者の友人と過ごしたかけがえのない時間

 慢性疾患は孤独に戦うものではなく、サークルの中の愛情を糧にして、長くつきあい、ゆっくりと克服していくもの。これからの慢性疾患とのつきあい方は、そういう形がいいのかもしれない。そしてそれを可能にするテクノロジーが、揃い始めたということなのだと思う。

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プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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