コラム

人のデータを勝手に使うな!データ経済社会は自己管理が原則に

2015年09月16日(水)17時23分

「データ経済」へ 情報を保護しつつ上手に共有することで社会は豊かになる WoodenheadWorld-iStockphoto

 ビッグデータの時代。ICカードで電車に乗ったことはデータとして記録される。そしてその記録をマーケティング情報として鉄道会社が別の企業に販売する。「自分の乗降データが、自分の知らない使われ方をする。そして自分のデータで鉄道会社が儲けている。なんか違和感を感じるんです」とビッグデータ系ベンチャー企業EverySense,Incの真野浩氏は言う。

 20世紀は金融が社会の「血液」だった。21世紀はデータが社会の「血液」になると言われている。データが共有、流通されれば、ビジネスの効率化が進み、社会が豊かになることは分かる。だからといってユーザーの知らないところでユーザーデータが勝手に使われていいものだろうか。

「たとえ捨てたものでも、ゴミ箱の中を勝手にのぞくのはプライバシーの侵害に当たります。それと同じことで、ユーザーが生成したデータを事業者が勝手に売買するのっておかしいと思うんです」と真野氏は主張する。

 そこでデータの持ち主が自分の意思でデータを提供し、データを利用したい人とマッチングする。そんな仕組みを作ろうというのがEverySenseだ。

 データを共有し合う社会って、どんな形になるのだろうか。その未来の1つのシナリオの可能性が、EverySenseの仕組みの中にあると思う。そういう意味で、EverySenseの仕組みを詳しく見てみたい。

データの提供者と利用者を結ぶ「築地の競り人」

 EverySenseの仕組みは次のような感じだ。EverySenseは、データの提供者を「ファームオーナー(農場主)」と呼ぶ。ファームオーナーは、自分のデータをどのような条件なら提供していいのかを登録する。一方でデータ利用者は「レストランオーナー」と呼ばれる。レストランオーナーは、どのようなデータを探していて、そのデータをどのように利用するのかを登録する。そしてファームオーナーとレストランオーナーの条件がマッチすれば、データの受け渡しが行われる。「われわれ自身がデータを集めたり買ったりしません。あくまでも中立。築地の競り人に徹します」と真野氏は言う。

 データは、ウエアラブルデバイスから生成されるものから、工場内のセンサーから生成されるものまで、多種多様な形式で存在する。それを共通の形式に揃えるのもEverySenseの役割だ。「IoTのデータをすべて標準化しようという話があります。でもセンサーデバイスの数が無数にあるので、絶対に無理。なので、われわれのような会社が中に入ってデータを整える必要があるんです」と真野氏は主張する。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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