コラム

台湾有事勃発のシナリオ――中ロはこうして日本を「沈没」させる

2021年12月11日(土)18時00分

ロシアで行われた「戦争の五輪」International Army Games に参加した中国軍(2019年) REUTERS/Vitaly Nevar

<中ロ艦隊が日本列島を周回した挑発行為は「グアム・台湾奇襲作戦シミュレーション」との憶測が>

旧日本軍による真珠湾攻撃から80 年が過ぎた今、中国とロシアの軍事作戦室のデスク上に1つの似たようなシミュレーションがあるのではないか、と各国の軍事専門家たちの臆測を呼んでいる。というのは、中ロ両国の海軍が大日本帝国海軍のような冒険を始めたからだ。

日本が衆議院選挙に突入した10月下旬、中国海軍とロシア海軍の艦艇合わせて10隻が日本海から津軽海峡を通って太平洋に入った。両国の海軍が津軽海峡を通過するのは初めてではないが、連合艦隊を形成する形では過去に例がなかったので、専門家たちも驚きを禁じ得なかった。

中ロ両国の海軍はその後、千葉県の犬吠埼沖から南下し、高知県の足摺岬沖を経て、鹿児島県の大隅海峡を遊弋(ゆうよく)しながら東シナ海に至った。日本列島を一周した両国の軍事的な示威行動は、日本とアメリカ、ひいてはオーストラリアと韓国をも戦略的に牽制するために行われた演習だと指摘されている。

中ロの空軍が沖縄県の尖閣諸島付近を飛行したり日本海を北上して島根県の竹島上空に侵入してみせた前例はある。日韓両国の係争地を通過することで、アメリカの2つの同盟国がそれぞれどのように反応するかを試しているようだった。

今回の両海軍の行動は明らかにそうした積み重ねの上で行われ、さらに大胆な挑発となっている。では、両国は実戦ではどのような作戦に打って出るのだろうか。各種の研究機関の情報を基に独自に分析してみよう。

まず中ロ両国海軍が、第1列島線を突破して西太平洋に出たとしよう。ロシア軍がアメリカのグアム基地に攻撃を仕掛けると、日米両国は同盟条約に則して反撃を開始する。日米の隙間を突くように中国軍は同時に台湾に侵攻し始める。

従来の想定どおり、台湾西部の平原地帯に上陸するとの陽動作戦を発動しながらも、実際は東部の花蓮空軍基地を粉砕してから一気に島全体を占拠する。ロシア軍は返す刀で沖縄の米軍基地に襲い掛かると同時に、中国軍は石垣島をはじめとする南西諸島を戦略的に押さえる。

プロフィール

楊海英

(Yang Hai-ying)静岡大学教授。モンゴル名オーノス・チョクト(日本名は大野旭)。南モンゴル(中国内モンゴル自治州)出身。編著に『フロンティアと国際社会の中国文化大革命』など <筆者の過去記事一覧はこちら

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=下落、ダウ249ドル安 トランプ関税

ワールド

トランプ氏、シカゴへの州兵派遣「権限ある」 知事は

ビジネス

NY外為市場=円と英ポンドに売り、財政懸念背景

ワールド

米軍、カリブ海でベネズエラ船を攻撃 違法薬物積載=
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 2
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 3
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 4
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 5
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 6
    トレーニング継続率は7倍に...運動を「サボりたい」…
  • 7
    トランプ関税2審も違法判断、 「自爆災害」とクルー…
  • 8
    「人類初のパンデミック」の謎がついに解明...1500年…
  • 9
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 10
    世界でも珍しい「日本の水泳授業」、消滅の危機にあ…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 4
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 5
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 6
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 7
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 8
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 9
    「人類初のパンデミック」の謎がついに解明...1500年…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story