コラム

対米戦争も市場経済も大金星──そんなベトナムを金正恩は目指す

2019年02月23日(土)13時30分

ベトナムに対しても、中国は志願軍としての派遣こそなかったものの、数十万人規模に上る軍事技術者と労働者を送り込み、武器弾薬の提供を惜しまなかった。社会主義体制を守るために共同戦線を組んでいた。

しかし、大国アメリカに勝った小国ベトナムは、温情を装った中国の覇権主義的内政干渉に果敢に異議を唱えた。中国が「恩知らずを懲罰」しようとして起きたのが79年の中越戦争だ。ベトナムと同じく、歴史的に長らく陸続きの中国による支配下に置かれてきた北朝鮮はこの懲罰戦争を苦々しく傍観し、心情的にはベトナムを支援したことだろう。

結局、中越戦争は社会主義国同士が交戦することで、冷戦体制の崩壊を促した。イデオロギー的な対立以上に中国の覇権主義こそが脅威、という現実を国際社会に認識させたからだ。

2月のハノイには中国の習近平(シー・チンピン)国家主席も晴れ舞台に登場したいに違いないが、今のところ誰からも招待されていないようだ。ただ米朝会談後、金が帰途に北京詣でをするならば、習は金を「礼儀正しい、儒教精神の長幼の序をわきまえた好青年」と評価することだろう。

<本誌2019年02月26日号掲載>

※2019年2月26日号(2月19日発売)は「沖縄ラプソディ/Okinawan Rhapsody」特集。基地をめぐる県民投票を前に、この島に生きる人たちの息遣いとささやきに耳をすませる――。ノンフィクションライターの石戸諭氏が15ページの長編ルポを寄稿。沖縄で聴こえてきたのは、自由で多層な狂詩曲だった。

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プロフィール

楊海英

(Yang Hai-ying)静岡大学教授。モンゴル名オーノス・チョクト(日本名は大野旭)。南モンゴル(中国内モンゴル自治州)出身。編著に『フロンティアと国際社会の中国文化大革命』など <筆者の過去記事一覧はこちら

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