コラム

上司の「終活」──人生100年時代の上司論

2019年11月26日(火)17時00分

人生100年時代において、この期間はリスクでしかない。

多くの企業は、役職定年の制度を設けている。組織の新陳代謝を促進させるためでもあるし、組織マネジメントレベルを維持させるためでもある。

山口周氏のベストセラー『ニュータイプの時代』にも記されているとおり、環境がどんどん変化する現代において、過去の経験は無価値化している。感度が研ぎ澄まされたプロフェッショナルマネジャーならいざ知らず、平凡な上司なら、過去の経験に頼らず自己鍛錬をつづけ、長年マネジメント能力を維持するのは難しい。

本人のためにも、組織のためにも、役職定年後に実務担当者に戻るほうがいい。実務から長く離れれば離れるほど、若手社員たちと同じパフォーマンスが出せなくなる。そのため実務に戻るなら、できれば早いほうがいいのだ。

だから、これからの上司は10年をめどに「終活」すべきだ。会社の指示に従っていると、いつまで上司という人生を歩まなければならないか、わからない。自分で終活することを私はお勧めする。

上司の「終活」とは?

終活とは「人生の終わりについて考える活動」のことを指す。つまり、上司の終活とは、「上司という人生の終わりについて考える活動」のことだ。

辞めるのでもなく、引き継ぐのでもない(少子高齢化の時代に、上司を引き継いでいったら組織は上司ばかりになる)。終わらせることだ。

繰り返すが、自分自身で終わらせること。それが「上司の終活」だ。

私の支援先に、53歳で部長を自ら"終わらせた"方がいる。優秀な部長だった。肩書が部長なので、会社からいろいろな役割を与えられた。現場の実務がほとんどできなかった。だからその後、事業部の統廃合が繰り返され、32人いた部下が4人に減っていったタイミングで、経営陣と話し合い、1年半かけて部長を終わらせた。

役職手当が減り、年収も20%ほどダウンした。しかしその分、現場に戻ることができた。勇気の要る決断だったが、上司をはやく終わらせないと、人生そのものの死期が近付くと考えたようだ。

上司を終わらせることで、今後の長い人生の「見通し」がたつようになった。定年後も、自分の専門性を活かして働きつづけられることもわかった。それが一番のメリットだったと、彼は振り返る。

しつこいようだが、上司のまま逃げ切ることはできない。もし逃げ切ったとしても仕事人生は、そこで終わらない。これからの時代、上司になったら、自分自身で終活することをお勧めする。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

20191203issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

12月3日号(11月26日発売)は「香港のこれから」特集。デモ隊、香港政府、中国はどう動くか――。抵抗が沈静化しても「終わらない」理由とは? また、日本メディアではあまり報じられないデモ参加者の「本音」を香港人写真家・ジャーナリストが描きます。

プロフィール

横山信弘

アタックス・セールス・アソシエイツ代表取締役社長。現場に入り、目標を絶対達成させるコンサルタント。全国でネット中継するモンスター朝会「絶対達成社長の会」発起人。「横山信弘のメルマガ草創花伝」は3.5万人の企業経営者、管理者が購読する。『絶対達成マインドのつくり方』『営業目標を絶対達成する』『絶対達成バイブル』など「絶対達成」シリーズの著者。著書はすべて、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。年間100回以上の講演、セミナーをこなす。ロジカルな技術、メソッドを激しく情熱的に伝えるセミナーパフォーマンスが最大の売り。最新刊は『自分を強くする』。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン、イスラエルへの報復ないと示唆 戦火の拡大回

ワールド

「イスラエルとの関連証明されず」とイラン外相、19

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、5週間ぶりに増加=ベー

ビジネス

日銀の利上げ、慎重に進めるべき=IMF日本担当
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 4

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 5

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    ネット時代の子供の間で広がっている「ポップコーン…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story