コラム

自主性のない部下より、自主性のない上司が増えている

2018年12月11日(火)13時30分

文句を言うだけで自分からは動こうとしない上司が多い gollykim-iStock.

<若者に自主性が足りないのは今に始まったことではない。ただ昔は、「俺が責任取るからチャレンジしろ」と背中を押す上司がいた。今のマネジャーは愚痴を言うだけ、それが日本企業の競争力を引っ張っている>

10年以上も、年間100回以上の講演やセミナーを管理者向けに実施していると、世の中の企業のマネジャーがどのようなことで悩んでいるのか、手に取るようにわかります。

10年前も、5年前も、そして現在も、共通の悩みを上司は抱えています。

組織の問題を解決するための「策」がわからないわけでもない。「策」はわかっているのだけれど、成果を手にできない。なぜなら、そのための「行動」が伴わないから──。

組織の根本的な問題は、これに尽きると言えます。

どんなに素晴らしい企画書を作り、どんなに長い時間かけて会議で議論しても、それが実行されなければ意味がありません。虚しいだけです。

日本には、スティーブ・ジョブズやイーロン・マスクのような、イノベーティブな発想をする人材がいないと言われて久しいですが、日本企業の問題はそんなことではありません。

現場を見ればわかる。行動力がないのに、発想力を身につけても意味がない。

日本人は、かつて手にしていた「コツコツやる」という麗しい気質を失ってしまったのです。

自主性のない部下たち

企業の現場に入ってコンサルティングしていると、マネジャーの皆さんが口をそろえて言うのは「部下の自主性」についてです。

「最近は自主性に欠ける部下が多い」

「いちいち指示しないとやらない若者が増えた」

と、愚痴ばかりこぼします。

ある部分を除いて、私も共感します。危機感や問題意識が足りないのか。自分から主体的に動く若者は少ないし、積極的に手を挙げて発言する人も多くない。上司の目線で見れば、物足りなさを感じます。

「ある部分を除いて」と書いたのは、それは最近の事象ではないから。49歳の私が若いころも、「最近の若いヤツは何を考えているかわからない。自主性が足りない」と、言われつづけていました。同年代の方も、覚えがあるでしょう。

ただ、現代と違っていたのは、自主性のないまま放置されることは稀であった、ということです。

「もっと積極的に失敗しろ」「俺が責任をとるからチャレンジしろ」と追い込まれました。「何事にも受け身でいられる状態」を長くつづけさせてはもらえなかったのです。

また、「自主性がない」とはいっても「自主性がゼロ」ではないことも上司は知っておくべきでしょう。

上司から指示されたこと以外、いっさい何もやらないような部下は存在しません。上司が「100」のレベルの行動を自主的にやってもらいたいと思っても、部下は「10」とか「20」程度の行動しか自主的にやらない。こういうことなのです。

プロフィール

横山信弘

アタックス・セールス・アソシエイツ代表取締役社長。現場に入り、目標を絶対達成させるコンサルタント。全国でネット中継するモンスター朝会「絶対達成社長の会」発起人。「横山信弘のメルマガ草創花伝」は3.5万人の企業経営者、管理者が購読する。『絶対達成マインドのつくり方』『営業目標を絶対達成する』『絶対達成バイブル』など「絶対達成」シリーズの著者。著書はすべて、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。年間100回以上の講演、セミナーをこなす。ロジカルな技術、メソッドを激しく情熱的に伝えるセミナーパフォーマンスが最大の売り。最新刊は『自分を強くする』。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

午前の日経平均は続落、朝高後に軟化 ソフトバンクG

ビジネス

米経済金融情勢の日本経済への影響、しっかり注視=米

ワールド

メキシコ、中国などに最大50%関税 上院も法案承認

ワールド

日米が共同飛行訓練、10日に日本海で 米軍のB52
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア空軍の専門家。NATO軍のプロフェッショナルな対応と大違い
  • 2
    トランプの面目丸つぶれ...タイ・カンボジアで戦線拡大、そもそもの「停戦合意」の効果にも疑問符
  • 3
    「何これ」「気持ち悪い」ソファの下で繁殖する「謎の物体」の姿にSNS震撼...驚くべき「正体」とは?
  • 4
    死者は900人超、被災者は数百万人...アジア各地を襲…
  • 5
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキン…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    「正直すぎる」「私もそうだった...」初めて牡蠣を食…
  • 8
    「安全装置は全て破壊されていた...」監視役を失った…
  • 9
    イギリスは「監視」、日本は「記録」...防犯カメラの…
  • 10
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story