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イタリア事情斜め読み

ヴィズマーラ恵子|イタリア

絶滅の危機に瀕しているトラの倍増計画TX2プロジェクトとイタリアの役割

iStock-MarkMalkinsonPhotography シベリアン/アムールタイガーの親子

世界には最大3,900頭の野生のトラが残っていると推定されている。野生のトラより長い間人間によって飼育されているトラはその約半分の8,000頭。しかし、この数も定かではない。
なぜなら、この絶滅危惧種であるトラは、違法な闇取引で売買されていたり、商業的搾取が行われており、信頼できるデータやそれを適切に管理することもできないという現状があるからだという。

12年前の2010年には、生息する野生のトラの数は世界全体で4,000頭未満と激減した。
それは、絶滅の危機に瀕していたに迫っていた歴史上最悪で最低数を記録した。
野生のトラの75%が生息するインドでは、1947年には40,000頭いたが、2018年には、2,967頭しかいなかった。インドのナレンドラ・モディ首相は、史上ワースト記録は「歴史的」と定義した。

本当にトラは絶滅しかけであると数字が物語っていた。

1940年代には、ロシアに生息するアムールタイガーは、世界最大のネコ科動物であるが、アムールタイガーが絶滅の手前まで激減してしまい、実にその数、たった40頭のみとなってしまった。
その後、ロシアは1947年にトラの狩猟禁止法を制定した。


| 12年前、トラが激減し絶滅しかけたのはなぜ?

絶滅危機に至った理由は、密猟、トラの生息地である森の破壊、トラに肖る漢方薬の迷信、ハンターの強靭な男アピールアイテム、富裕層のステータスなど何世紀にもわたってトラは絶えず人間のエゴのために命を奪われ続け、脅かされてきたのである。

毛皮は貴重な商品であり、さまざまな標本やトロフィーなどオブジェ化されたトラは贅沢と力の象徴とみなされ、仔虎はペットとして販売されるなど、高値で売買取引ができるので密猟も絶えない。

また、いくつかの文化によるとトラの骨「虎骨(ここつ)」は、漢方薬になるとアジアを中心に信じられており、トラの足の骨を煮詰めて膠質を取り出した「虎脛骨(こけいこつ)」は、筋肉増強やリウマチを治す効果があるなどと漢方医は考えている。
トラのすねの部分の骨を酒に浸した虎骨薬酒は精力増強効果があるなどの迷信により、何世紀も実践されてきた習慣もある。
しかし、それらは臨床試験や従来型の科学的検証においても立証されていないので、まったく根拠のない嘘や噂話のレベルであり、絶滅危惧種の身体部分をこのような目的に使用するために殺してしまうのは、残酷かつ非現実的で無意味なことであると非常に憤りを感じる。

ワシントン条約CITES(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)は、野生動植物の国際取引の規制を輸出国と輸入国とが協力して実施しているものであるが、2000年から2009年までのCITES取引データでは、違法にアメリカに輸入され押収されたトラの42%が中国産かベトナム産であった。

| 南アフリカにもはやトラはいない

国際的なトラの取引の中心にあるのは南アフリカである。

動物の権利団体は、トラは南アフリカには自生していないとも説明している。
ドイツの動物愛護団体Four Pawsによる最近の報告によると、南アフリカは、「野生生物取引に関する国際協定(ワシントン条約CITES)に露骨に違反している」と指摘し、トラの私的繁殖と商業取引に関する効果的な規制の欠如が起こっていると述べている。
2011年から2020年の間に、少なくとも359頭の生きたトラが、主にベトナム、中国、タイに輸出され、これらのうち約255頭は動物園に販売された。
トラの身体パーツの一部や漢方薬や毛皮の生産のために54頭のトラが輸出され、違法取引があったという。
トラは法的保護を受けておらず、これらの法的ギャップが違法取引の温床となり、トラの飼育がライオンよりもさらに収益性が高くなったことことなども密猟を助長する原因となっていると考えられる。
昨年、南アフリカ政府は、「狩猟を禁止したい」との目標は発表しており、毎年大量の飼育用のトラと繁殖用のトラを輸出して、世界中のトラの個体数の減少に貢献するなどの努力は示していると述べた。

| イタリアの役割

南アフリカ在イタリア大使館は、「これらのレポートの焦点は南アフリカの産業にあるが、明らかになった証拠はトラなどの大型ネコを絶滅から守るための緊急かつ世界的な変化の必要性を強調している」と言い、「残念ながら、明らかになった数は氷山の一角である」と説明した。
動物の権利団体が発表したデータによると、これらの違法取引における50%はヨーロッパ行きであり、販売先は主にイタリアとフランスであるという。

それはどういうことなのか?トラの輸出先がイタリア?トラをイタリアに輸入することなど可能なのか?

イタリアとフランスはサーカス会社の存在感が最も高い国であるというのがポイントだ。
サーカス会社には、トラの飼育と繁殖が許可されている。
実際にはこれら"動物"、この場合は"トラ"の売買は、他のサーカス会社に合法的に販売することも許可されているのだが、その結果、どこの誰に売られ、その売られたトラはどこに行き着いたのかは不明であり、追跡もできていないという。
例えば、スイスのサーカスは、動物の扱いに関して動物園と同等の厳格な規則の下に管理されているというが、イタリアにはそれがない。
エキゾチックな特定動物の扱いに関する統一されたデータベースや登録簿などはなく、杜撰な管理状況でチェックを実行することは不可能であるというのが実態だった。

最近の典型的な事例は、イタリアのラティーナからロシアに輸送された10頭のトラの事例がある。

動物愛護協会によると、2018年10月に小さなケージに閉じ込められ10頭のトラのオデッセイがトラックで運ばれ、9日間をかけてイタリアのラティーナからロシアに輸送された。その搬送中、ポーランドとベラルーシの国境で6日間の停止検疫を余儀なくされ、検疫を受けている間、1頭のトラが死亡したというニュースがあった。
生きているトラの価値がおよそ3,000〜5,000ユーロ(約40万円から65万円)が販売価格の相場であるとすると、死んだトラである場合は、驚くべきことに、得られる利益が15,000〜20,000ユーロ(約196万円から261万円)程になるという。この死亡したトラの行方は、残念ながら漢方薬になってしまった。

| 今後の解決策

違法なトラの取引におけるイタリアの役割を定義する際の問題の1つは、一義的なデータを取得できないことにある。

例:公式データによると、現在イタリアでは24頭のトラが特定動物の所持をしていると登録宣言されているが、サーカスや動物園などでこれらの動物が存在するという証拠を交差させることによって得られる数を入れると、実際のトラの数は少なくとも400頭であると見込まれる。

野生動物や特定動物の輸入、取引、所持を停止を求めていたイタリアの動物保護団体LAV(動物実験反対連盟)によると、

2021年4月20日、上院は、動物のウイルスや人獣共通感染症の人間への拡散を効果的に防止し、"不自然な状況で生き残ることを余儀なくされ、フェアーやペットショップでオブジェクトとして動物を販売することを禁止する"という動物保護団体LAVの提案を具体化する代理法を承認した。
イタリア保健省は、トラを含む野生動物や特定動物の繁殖、所持、取引についての規定に変更を加えた。
議会により承認された法律53の第14条の書簡に準拠した場合、それらの規定には、すべての野生動物とサーカスおよび私的繁殖に利用される動物も含まれるという画期的な変更であった。

イタリアの動物保護団体LAV(動物実験反対連盟)の活動の様子

| 2022年までにトラの数を倍にするプロジェクト「TX2」とは

トラが生息しているのは世界に13か国だけである。

世界自然保護基金WWF(World Wildlife Fund: WWF)は世界のトラ保護において大事な役割を担っている。
野生のトラの保護活動「TX2」プロジェクトというものを立ち上げ、2010年に3200頭とされた野生のトラを、2022年までの間に倍にする国際的な保全計画を以下のトラが生息している13の国々と進めていた。
2010年も寅年であった。あれから12年、今年は2022年寅年。
状況はというと13か国のうち5か国はすでにトラの数を2倍にしている。
ブータン、中国、インド、ネパール、ロシア(この5カ国は幸いなことにトラの数が2倍に増加した)
バングラデシュ、カンボジア、インドネシア (TX2プロジェクトに参加し増加中)
ラオス、マレーシア、ミャナル、タイ、ベトナム(2年以内に6,000頭のしきい値に達すると期待できる)

WWF(世界自然保護基金)ジャパンは、この「TX2」プロジェクトについて詳しく動画で説明している。
 

Profile

著者プロフィール
ヴィズマーラ恵子

イタリア・ミラノ郊外在住。イタリア抹茶ストアと日本茶舗を経営・代表取締役社長。和⇄伊語逐次通訳・翻訳・コーディネータガイド。福岡県出身。中学校美術科教師を経て2000年に渡伊。フィレンツェ留学後ミラノに移住。イタリアの最新ニュースを斜め読みし、在住邦人の目線で現地から生の声を綴る。
Twitter:@vismoglie

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