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オーストラリアの診察室から

高尾康端|オーストラリア

選挙と医療問題

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オーストラリアは5月21に総選挙が予定されています。オーストラリアの中心的な政党は現在与党の自由党(Liberal Party)と野党の労働党(Labor Party)です。与党も最近支持率が下がってきていますが、与党の労働党にもそこまで期待できなという意見も多いようです。選挙に先立ち双方からいろいろな政策案がでています。コロナ政策、高騰を続ける住宅費、外交についてなど様々な分野に及びます。医療政策や医療費も選挙で話題になるトピックです。 医療関係ですと、メンタルヘルス、老人ホーム、医療費問題などがあります。

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画像: Sadeugra_iStock

メンタルヘルス

オーストラリアではコロナの影響もありメンタルな問題を抱える人がここ数年間増加しています。オーストラリアでは軽度のうつ病や適応障害などの場合はGP(家庭医)と臨床心理士を受診します。重度のうつ病や複雑な精神疾患の場合は精神科を受診する必要があることもあります。臨床心理士でも人気のある方は一か月以上アポイントメント取れない場合や場合によって新規の患者をとっていない場合もあります。精神科医を受診するのはより大変で、以前から精神科を受診するのには何か月もまたなければいけないことがありましたが、最近はよりいっそう待ち時間が長くなっている気がします。特に最近はADHD(注意欠如・多動症)の診断と治療のために精神科を受診する人が増えている印象があります。インターネットなどでADHDのことが広まってきたため、大人でも正式に診断をしてもらい、治療を行いたいという人が増えたようです。治療薬の開始には精神科の診断が必要なため、精神科の需要度は以前より増えています。現在メンタルヘルス関連で一番受診が大変なのが子供を診療できる精神科医です。もともと小児の精神科医はそこまで人数が少ないのに、最近は子供でも抗うつ剤が必要な子や精神的問題を抱えている子が増加しているようです。

医療費と医療政策

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画像: robynmac_iStock

医療費の問題は以前からずっと続く問題です。オーストラリアでは開業医の場合、診療費を自由に設定することができます。オーストラリア政府はある一定の診療報酬を払いますが、開業医がそれ以上の診療費を設定することも可能です。開業医が指定した診療費と政府の診療報酬の差額は患者が支払うことになります。日本のように3割負担と決まってないため、クリニックによっては差額なしのところもありますし、場合によっては5割以上のところもあります。オーストラリアでは基本的に緊急で病院の救急に行く以外、ほとんどの患者がGP(家庭医)を受診します。GPのオーストラリア政府からの診療報酬はここ10年近くあまり変わっていません。費者物価指数の増加にはまったくついていっていません。最低賃金やクリニックの土地代などが年々増加している中、診療報酬はほとんど変わっていません。これらの費用をカバーするため\の対策として開業医がとっている手段の一つは診療費を政府の診療報酬より高く設定することです。以前から政府の診療報酬より診療費を高くするクリニックはありましたが、最近は増加しています。政府の診療報酬だけではクリニックをきちんと運営し、高水準の医療を提供するのは無理であるという考えの医師が増えてきている気がします。しかし低所得者が多く住むエリアでは、診療費が政府の診療報酬より多く、差額がある場合、医療を受けられないという意見も耳にします。たとえちょっとの差額でも、患者はまず指定された医療費のすべてを支払う必要があります。日本のように差額3割だけ支払うのではなく、先に差額も含めた診療費をすべて払い、あとから政府の診療報酬が患者に払い戻されることになります。最初に全額は払うのが難しいという患者もいるようです。

メンタルヘルスや医療費の問題は以前からずっと続く問題で、今のところどちらの政党からも明確な打開策は提示されていませんが、今回の選挙で医療問題が改善されることを期待しています。

 

Profile

著者プロフィール
高尾康端

日本、スイス、シンガポール、アメリカで育ち、2004年からオーストラリアに移住。シドニー大学医学部を卒業。現在は東ブリスベンエリアHawthorne Clinicにて家庭医 (GP)として勤務。家庭医の観点からみる病気についての情報、また母国である日本と移住地オーストラリアの医療システムの違いや、オーストラリアで病気になった時に役立つ情報を発信している。

Twitter:@dryasutakao
Facebook:Dr Yasu Takao
ブログ:https://www.dryasutakao.com.au/blog

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