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ドイツの街角から

シュピッツナーゲル典子|ドイツ

日独デザインの融合を目指す「デザインクラッシュ」展、デュッセルドルフで今年も開催

アーティストの選出について

発起人の一人、キヨに今回のアーティスト選出について聞いた。

newsweekjp_20250616075156.jpg会場内にて・左からリリー、アレックス、キヨ

「人選の基準は特に設けていません。自分たちが気に入ったアーティストを中心に選びました。リリーとアレックスが「ドイツ人の目」で選んだ人々の中には、僕自身も知らなかった人が多かった。一方、僕の選出はタイポグラフィを基盤にしていて、逆にリリーやアレックスの知らないアーティストも多かったんです。そうした発見も面白かったですね」

※タイポグラフィとは、文章を読みやすく整えるデザイン手法、または文字自体を用いて視覚的なデザインを構成する手法を指す。

今回作品を出展したローマンに話を聞いた。木版画に情熱を傾ける彼のキャラクターの多くは半分動物、半分人間という奇妙なキャラクターが多い。

「僕が3歳の時、両親と一緒にポーランドからドイツに移住しました。小さい時から日本のアニメが好きで興味を持っていました」

さらにかつて1か月ほど日本全国を巡った時の思い出も語ってくれた。

「大都市では英語で書かれていることが多かったのが、地方では日本語のみで全く理解できず、迷子になった気分でした。でも困ったなというよりも、全く未知の世界に舞い込んだような感じで、逆にそれを楽しんでいる自分がいることにも気が付いたのです」

「僕の作品には、日本語の言葉が入っています。友人に間違っていないか確認してもらっていますけど...」と笑うローマン。

展示の特徴とメッセージ

日本のアーティストに集まってもらい、撮った写真の後方の壁一面に、今回のために制作された作品があった。キヨによると、これは各アーティストに提出してもらったアイデアを、ドイツ国内で印刷した作品だそう。

「デザインクラッシュ2025」は、展示、ネットワーキング、日独英の多言語レクチャーを組み合わせたデザイン・フェスティバル&カンファレンスである。

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日本とドイツの美意識の融合をテーマに、創造性や異文化交流、革新的なデザインに関心を持つすべてのアート・デザイン愛好家に向けたイベントとして開催された。また、新進気鋭のクリエイターの発表や交流の場としても注目された。

newsweekjp_20250616081348.jpg特に、日独のクリエイティブ・プロフェッショナルを招聘し、両国のデザインやイラストレーション分野における活発な交流を促進。その目的は、デュッセルドルフで毎年開催される本イベントを、日独のデザイナーが出会い、刺激を得られる恒例の祭典として定着させることである。

モバイルショップも登場

今年は、デュッセルドルフのデザインスタジオ「Studio Mudio」とのコラボレーションによりモバイルショップも新設された。ここでは、限定250枚の新作Tシャツをはじめ、日本、イラストレーション、デザインに関連する厳選アイテムが販売され、多くの来場者が関心を寄せていた。

今後の展望

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展覧会終了後に感想を聞くと、キヨは歓喜の声をあげてこう語った。

「今年の入場者数は、3週末の9日間で4,000人が来てくれて、びっくり。11人のアーテイストの作品数は350点にも上ります。本当に大成功でした。かなり疲れたけど、楽しく終わったのでうちらもめっちゃハッピーで、これからの展開が楽しみ」

「デザインクラッシュ」は、デュッセルドルフにおける日独デザイン・フェスティバルとしての地位を着実に築きつつある。今後も両国のデザイナーの交流と共創の場として、さらに発展が期待される。

取材協力・デュッセルルドルフ観光局

 

Profile

著者プロフィール
シュピッツナーゲル典子

ドイツ在住。国際ジャーナリスト協会会員。執筆テーマはビジネス、社会問題、医療、書籍業界、観光など。市場調査やコーディネートガイドとしても活動中。欧州住まいは人生の半分以上になった。夫の海外派遣で4年間家族と滞在したチェコ・プラハでは、コンサートとオベラに明け暮れた。長年ドイツ社会にどっぷり浸かっているためか、ドイツ人の視点で日本を観察しがち。一市民としての目線で見える日常をお伝えします。

Twitter: @spnoriko

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