World Voice

アルゼンチンと、タンゴな人々

西原なつき|アルゼンチン

「欲しいものは欲しいとはっきり言うべし」タンゴの歌詞から学ぶアルゼンチン暮らしの秘訣

このカンバラッチェというタンゴ。混乱に満ちたこの国では、待っていたって誰も与えてはくれない。生きていくためには、欲しいものはしっかりと自分の手で掴みに行かなくてはいけない。たとえ、それがずる賢い方法であったとしても・・・。
そんな自分たちを嘲笑するようなアルゼンチンの世相を、隠語を駆使し、芸術的に見事に歌詞に反映した名曲なのです。1930年代の歌ながら未だに若い世代にも幅広く知られ、共感されています。共感といっても、自虐的な意味合いで、盗みなどの悪事を肯定するということではありません。
それは、時代が変わってもアルゼンチンはずっとアルゼンチンのまま、と言えるのかもしれません。その理由もわかってくるような気がします。



Cambarache - カンバラッチェ (1934, 作詞・作曲 Enrique Santos Discépolo / Tango)(拙訳)

知っているさ、昔も今もこの世はしょうもないものだって
506年だろうが、2000年だろうが!
いつの時代も盗人はいるもんだ
偽善者、詐欺師
喜ぶ者あれば、泣く者あり
本物もあれば、それに見せかけた偽物もある
20世紀は横柄や悪事で充満している
誰もがそれを否定できなくなった
混乱に満ちた、勝ち負けの世界に生き
同じ泥の中、みな心に悪を持っている

(中略)

20世紀、秩序なんてない世界
熱に浮かされ、問題だらけ
泣かない赤ん坊はお乳は吸えない、
盗めるものを盗まない奴は愚か者
行ってみな!うまくいくさ!
オーブン(=地獄)の中で再会しよう
それ以上は考えるな、ここに座れよ。
お前がどこの生まれだって誰も気にしない
牛のように昼も夜も働いてる奴だって、
他の誰か(女)が稼いだ金で生きている奴だって、同じ。
殺しをやる者、救う者、法の外で生きる者、みな同じなんだ・・・



Que el mundo fue y será una porquería
ya lo sé...
(¡En el quinientos seis y en el dos mil también!).
Que siempre ha habido chorros, maquiavelos y estafaos,
contentos y amargaos, varones y dublé...
Pero que el siglo veinte es un despliegue de maldá insolente,
ya no hay quien lo niegue.
Vivimos revolcaos en un merengue y en un mismo lodo
todos manoseaos...

¡Siglo veinte, cambalache problemático y febril!...
El que no llora no mama y el que no afana es un gil!
¡Dale nomás!
¡Dale que va!
¡Que allá en el horno nos vamo a encontrar!
¡No pienses más, sentate a un lao, que a nadie importa si naciste honrao!
Es lo mismo el que labura noche y día como un buey,
que el que vive de los otros (las minas), que el que mata, que el que cura o está fuera de la ley...

(この動画の歌手はフリオ・ソーサ。人気絶頂の時期に不慮の事故で早世したタンゴ歌手です)


~~~


余談ですが、晴れてインターネットが無事に繋がった私は、次の試練、「壊れたガス湯沸かし器の修理に来てもらう」という難関に挑むこととなるのでした・・・。
深夜2時、ワンルームの半分が水たまり状態になっており、なぜかガス湯沸かし器から滝のように水があふれ出している様子を発見したときは本当に悪夢でした。悲しいことに、これは珍しいことではありません。前の家では、寝ていたら天井から水が滴り落ちてきて、上の階に文句を言いにいったところ、水があふれていたのは2つ上の階だった、ということもありました。これも、友人同士で盛り上がる、アルゼンチンあるある話なのです・・・。

 

Profile

著者プロフィール
西原なつき

バンドネオン奏者。"悪魔の楽器"と呼ばれるその独特の音色に、雷に打たれたような衝撃を受け22歳で楽器を始める。2年後の2014年よりブエノスアイレス在住。同市立タンゴ学校オーケストラを卒業後、タンゴショーや様々なプロジェクトでの演奏、また作編曲家としても活動する。現地でも珍しいバンドネオン弾き語りにも挑戦するなど、アルゼンチンタンゴの真髄に近づくべく、修行中。

Webサイト:Mi bandoneon y yo

Instagram :@natsuki_nishihara

Twitter:@bandoneona

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