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悠久のメソポタミア、イラクでの日々から

牧野アンドレ|イラク

大雪に見舞われたイラクとシリア

©ViliamM-iStock

イラク北部やシリア国内ではここ数日、度重なる大雪に見舞われています。

イラク最北部、特にイランとの国境を接する山岳地域では毎年大雪になることは珍しくないのですが、今年は比較的温暖な地域に属する私が暮らすアルビル市内でも約20年ぶりの積雪を記録しました。

一方、大雪や低温は経済活動の停滞や事故、またシリア国内では避難民キャンプで子どもたちが亡くなるといった悲劇にも繋がっています。

     

アルビル市内では20年ぶりの積雪、一方で被害も

アルビル市内ではここ数週間断続的に雨が降っており、洪水になることも今季は2度起きています。

しかし夏場に50℃を越すアルビルで雪になることはとても稀で、それだけ今回の積雪は地元の人たちを興奮させていました。

実際、ここ数日最高気温は5℃を下回り最低気温も-4℃と寒さに慣れていない地元の人たちにとっては凍えてしまうような低温が続いており、今回の雪はそのタイミングで少ない雨が重なったのか極めて珍しい出来事でした。

このことを紹介する記事では、「アルビル市内でこれほどの雪が記録されるのは2004年以来だ」とする地元市民の声を紹介しています。

昨年には首都のバグダードで1世紀に2回しか起きていないという、さらに稀な積雪が起きており、2年連続で不思議な気候現象がイラクでは起きています。

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約20年ぶりに積雪を記録したアルビル市内 ©筆者撮影

アルビルと比較して、イラク最北部の山岳地域で雪が降ることは全く珍しいことではありません。

しかし今年は山岳地域でも例年にも増して雪が積もり、北東部のイラン国境に位置するHaji Omranでは20日、一晩で60cmの積雪と-15℃の最低気温を記録しました。

大雪は道路の寸断を起こしており、北東部のスレイマニア県のハラブジャでは街に物資が届かず除雪作業が急がれている地域もあります。

イラン国境との検問所でも除雪作業が難航しており、当局は「緊急の場合を除き越境をしないよう」市民に求めています。食料品といった基本的な物資もイラクはイランから輸入している事情もあり、長引けば生活への影響も懸念されています。

またアルビル県とスレイマニヤ県を繋ぐ幹線道路も雪の影響で夜間の道路封鎖が現在も続いています。

  

シリア国内では大雪による死者も

イラク北部地域の影響もさることながら、隣国シリアの北部地域では大雪がさらに大変な被害を与えています。

約200万人の国内避難民が現在も暮らすシリア。その中で最も危機的状況にある北西部地域は18日に大雪に見舞われ、避難民キャンプのテントが雪の重みで潰されるという被害が出ています。

国連の報告によると、362の家族用テントが被害を受け約2,000人が一時住居を失う状況になりました。また子ども一人がテントに押し潰され亡くなるという事故も起きています。

またこの地域では現在約40年ぶりとも言われる寒波に見舞われており、寒さを凌ぐために火をおこしそれがテントに燃え移り3歳と5歳の兄弟が亡くなっています。その他にも子どもの低体温症や凍傷も報告されており、紛争という危機の上にさらに自然の猛威が与える危機が続いています。

国連を中心に越冬支援が続いていますが、今度はこの雪解け水が原因で春には洪水の発生も大変懸念されています。

「自然は平等」のはずですが、このような自然災害はもともと危機の中にあり脆弱性の高い人々に対して一層の損害を与えます。

昨年は夏場に深刻な水不足となったことから今年はしっかりと雨が降り、アルビルに暮らす私の周りの人たちも喜んでいます。

ただ「恵みの雨」も一線を越すと生活に大きな悪影響を及ぼすことも、ここ数週間身に染みて感じています。

日本で暮らしていた時もそうでしたが、また別の形で「逆らうことのできない圧倒的な自然」を日々感じるイラク生活です。

 

Profile

著者プロフィール
牧野アンドレ

イラク・アルビル在住のNGO職員。静岡県浜松市出身。日独ハーフ。2015年にドイツで「難民危機」を目撃し、人道支援を志す。これまでにギリシャ、ヨルダン、日本などで人道支援・難民支援の現場を経験。サセックス大学移民学修士。

個人ブログ:Co-魂ブログ

Twitter:@andre_makino

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