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England Swings!

ラッシャー貴子|イギリス

運転免許の更新にまつわる日英のいろいろ

 英国の運転免許の更新は10年ごとで、手続きはすべて郵送で済んでしまう。だからドライバーは免許を手に入れた後、違反さえしなければ、改めて注意を促されたりする機会は一度もない。そう思うと、最低でも5年に一度、書き換えのたびに講習があって、安全運転を訴えたり、新しい規則を教えてくれたりする日本のやり方は丁寧でいいんじゃないのかな。当日もらう資料も、新しい規則や高齢者の免許返納のことなんかが目立つ場所に書かれていて、考えるきっかけにもなる。わたしにはこわくて仕方ない子どもの飛び出しシーンも、かえっていい薬になる人がいるかもしないし。

 もう15年ほど前のこと、英国でまだ運転していた頃に、対向車がこちらに向かって同じ車線を走ってくるという場面に遭遇した。しかも立て続けに2度。当時、英国はまだEUの一員で、ヨーロッパ大陸と自由に行き来することができた。確かEUの免許だけで英国内を運転することもできたので、この人たちは右側走行の自国のルールと混乱したんじゃないかと思う。幸運なことに、2回ともあちらが自分で気づいて車線を変えて(戻って)くれたし、こういう経験は後にも先にもこの2回だけだけれど、これをきっかけにわたしはロンドンで運転するのをやめた。自分がどんなに気をつけていても、自動車が自分に向かってきたら避けようがないもの。

 当時とは事情が変わったけれど、この国には今も外国人はかなり多いのだし、もし免許を書き換えるたびにちょっとした講習があって、「この国は左側走行です。特に外国で免許をとったみなさん、気をつけて」とか、「人が飛び出してくる可能性もありますよ」と注意を促されたら、意識するドライバーが増えるんじゃないだろうか。英国人にとっても、たまには運転のことを考える機会があるのもいいんじゃない? とも思うけれど、今の英国では、「人手も予算も不足してるんで」と一蹴されそうだ。 

 結局のところ、どこで運転していても、どのくらい注意するかなんて自分次第であるべきだなとも思う。自分が気の済むだけ気をつければよくて、英国風とか日本風とかやたらに分けなくていいのかもしれない。でもせっかく両方を知る立場にあるので、自分らしくいいとこどりするハイブリッドになれたらいいなと思う。運転に限らず。

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東京の夕暮れどき。すっかりペーパードライバーになったわたしからすると、こんなに車の多い東京で、しかも暗くなってから運転をするなんて尊敬に値する。東京に限らず、運転してくれるみなさん、ありがとう。筆者撮影
 

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著者プロフィール
ラッシャー貴子

ロンドン在住15年目の英語翻訳者、英国旅行ライター。共訳書『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』、訳書『Why on Earth アイスランド縦断記』、翻訳協力『アメリカの大学生が学んでいる伝え方の教科書』、『英語はもっとイディオムで話そう』など。違う文化や人の暮らしに興味あり。世界中から人が集まるコスモポリタンなロンドンの風景や出会った人たち、英国らしさ、日本人として考えることなどを綴ります。

ブログ:ロンドン 2人暮らし

Twitter:@lonlonsmile

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