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ラッシャー貴子|イギリス

11月を明るく照らす花火と焚き火、ガイフォークス・ナイト

 夫が育った北イングランドの小さな町では、ガイフォークス・ナイトの前に子どもたちが燃やせるものを近所から集め、当日は大人も一緒に町の空き地で盛大に焚き火をしたそうだ。アルミホイルにくるんだじゃがいもを火に投げ入れて、ジャケットポテト(「じゃがいもの焼きいも」)をよく作ったと言うので「楽しそう」と返したら、「おいしかったらいい思い出だけど、生焼けを食べさせられるのがイヤだった」と顔をしかめた。でも、大人になったらそれもいい思い出じゃないかな。

 12、3年前、週末にあたった11月5日の夕方にロンドンの空港に到着したことがあった。窓の外で何かちらちら揺れるので見てみると、暮れかかる空の下、驚くくらいたくさんの焚き火がぼうぼうと燃え、地面から花火があがっていた。ガイフォークス・ナイトを知らなかったら、自分の目を疑っていたと思う。花火を見下ろしているのが夢か映画を見ているようで、小さな窓に頭をつけてみとれた。あの頃にスマホを持っていたら、皆さんにもここで写真や動画をご紹介できたのに!

 ガイフォークス・ナイトでは、イングランド南岸の町ルイスが有名だ。ここのイベントは花火大会というより、火のお祭りだ。動画や写真でしか見たことはないのだけれど、17世紀の衣装などで仮装した人たちが松明を持って練り歩く様子を見ていると、町全体が中世にタイムスリップしたように感じる。建物の2階分はありそうな大きな焚き火も見事だし、捕えられた姿のガイ・フォークスの張り子が町中を引き回されたり、爆竹の煙で何も見えなくなったりと、かなり見ごたえがありそうなので、いつか自分の目で見てみたい。

ルイスのボンファイヤー・ナイトを運営する団体、Southover Bonfire Societyのインスタグラム投稿より、小雨の中行われた今年の様子。時事ネタも取り入れるこのお祭りでは、今年は9月に亡くなったエリザベス女王の追悼が行われ、辞任したふたりの元首相をはじめ政治家を風刺した張り子が町を練り歩いた(そしてブーイングを浴びせられていた)(ツイッターでLewes bonfireで検索すると、いろいろな動画や写真が見られます)。

 ルイスの町ほど凝っていなくても、花火大会は各地で開かれている。たいてい焚き火も用意されているし、最近は花火と音楽やレーザー、ドローンを組み合わせる演出も楽しめる。この時期の名物、トフィーアップル(りんご飴)を屋台で買って、会場を歩くのもいい。場所によっては移動遊園地やゲームも出て、射的のようなボール当てでとったぬいぐるみを持ち歩く人もいる。なんだか日本の夏祭りのようだなあと思う。

ロンドンで有名な花火大会が行われる、テムズ川南岸のバタシーパークの公式インスタグラムの投稿より、今年の様子。この花火大会はチケットがすぐに売り切れる人気のイベントだ。移動遊園地も出て楽しそう。公園を使う花火大会は地方団体が運営していることが多いけれど、近くの大会を調べていたら、「財政困難により今年は中止」というところを見つけて寂しくなってしまった。こんなところにも物価高騰の波が押し寄せていたのか。

 花火が集中するこの時期、災難なのはペットたちだ。英国動物虐待防止協会(RSPCA)によると、ペットは音にも光にも反応して、花火にストレスを感じるペットは全体の約3分の2にもおよぶらしい。以前わが家にいた2匹の猫も花火と雷が本当に嫌いで、ふだんはわがままなくせに、この時期はよくわたしに擦り寄ってきていた(むふふ、そこがまたかわいい)。RSPCAのサイトでは、花火の時期には家の中に隠れられる場所を確保する、カーテンを閉めるなどの具体的な対処法が紹介されている。最近ではなんと、ペットの気を花火からそらすために、人気のFM局が「ペットクラシック」なる番組を放送しているそうだ。さすが動物好きの多い英国と感心したけれど、ちょっとエキセントリックな匂いがしなくもない。

Profile

著者プロフィール
ラッシャー貴子

ロンドン在住15年目の英語翻訳者、英国旅行ライター。共訳書『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』、訳書『Why on Earth アイスランド縦断記』、翻訳協力『アメリカの大学生が学んでいる伝え方の教科書』、『英語はもっとイディオムで話そう』など。違う文化や人の暮らしに興味あり。世界中から人が集まるコスモポリタンなロンドンの風景や出会った人たち、英国らしさ、日本人として考えることなどを綴ります。

ブログ:ロンドン 2人暮らし

Twitter:@lonlonsmile

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