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NYで生きる!ワーキングマザーの視点

ベイリー弘恵|アメリカ

日本の美味しい野菜を米国で38年販売してきた鈴木ファーム〜事業譲渡で経営ピンチを救った企業とは?

©Food's Style USA Inc, Ken Suzuki

ニューヨークやニュージャージーの日系スーパーで日本の野菜といえば、鈴木ファーム※1というのは、誰もがご存知なブランド名として定着してるのではないか?鈴木清信(すずききよのぶ アメリカ名 Ken Suzuki)さんが経営してきた鈴木ファームの歴史は、すでに38年になるという。

suzukifarm.jpg©Food's Style USA Inc, 

鈴木さんもご高齢になってきているが、残念ながらデラウェア州にある農場を継ぐ人がいないという問題が発生した。そんな中、2021年の2月より、Food's Style USA Inc,へ、鈴木ファームの事業譲渡という形で経営を続けることとなったのだ。経営を一切まかせ、鈴木さんを含む社員はみな、これまで通り農業をつづけ、野菜づくりに専念することができているという。今回は、Food's Style USA Inc, のディレクター伊郷尚弘(いごうたかひろ)さんにお話をうかがった。

「Food's Style USA Inc,は、2013年に創業しており、これまで山頭火のラーメンをシアトルに2店舗、ボストンに2店舗、ワシントンに1店舗の5店舗をフランチャイズ経営で路面店出店しています。

まず弊社のCEOである米田(米田純:東北楽天ゴールデンイーグルス創設メンバーで、初代球団代表を勤めていた)の話から始めます。赴任中の仙台で、2011年に東日本大震災にあいました。ご友人で、山頭火の社長である菊田さん(菊田伸一)と炊き出しをしたそうです。山頭火には行列ができていました。

被災地で『おいしい』とラーメンを食べ喜んでいる人たちを見て、こんなに食というのが大事で、生きることに直結しているのだと、食の世界に飛びこんだといいます。それで、フランチャイズの権利を持って、僕がいた会社に入ってきたんです」

伊郷さんも、米田氏の『和食文化・おもてなし文化を世界に伝えるプラットフォームづくり』を経営理念としてもつ海外進出に同調し、アメリカへ渡ってくることを選んだ。

「山頭火は、これまで順調に経営を続けていましたが、パンデミックで飲食店として打撃をうけ、窮地に陥りました。今は、ようやく回復の方向へ進んできています。当初はニューヨークにも店舗を出したいと考えていたのですが、こんな状況になったので、出さなくてよかったです」

ラーメン店を経営している会社がなぜ農業に?というのが疑問だが、米田氏が、食というものの上流にある農業をやりたいという思いがあったからだという。

「シアトルに本社があるのですが、米田は、西海岸側で農園をできないかと探していたんです。見つからなかったところで、偶然、鈴木さんの農場のことを知りました。日系をのぞくアジア系スーパーに置いている野菜よりも、鈴木ファームの野菜は鮮度がよく、味がよいことは確かです。ですから、日本人だけでなく、もっと日本人以外の人たちにも鈴木ファームの野菜を食べていただきたいのです」

伊郷さんが鈴木ファームの仕事に携わるようになってわかったことは、農業以外の事務作業がとても多いこと。これまでは、お問い合わせの対応から、インボイスづくりや入出金の管理もすべて鈴木さんが一人でやっていた。これからは、鈴木さんが農作物に集中できる環境となる。

「人気商品は通年化していきたいです。種まきを早くすれば、東京ネギも早くから出せるとか。土地や土のことは鈴木さんが一番知っているので、鈴木さんに相談しながら事業拡大を目指しています。農地を広げる可能性も大いにあると思います」

大根を植えたあとには、ネギを植えられないとか、土は天日干しをする必要があるなど、農業の細かな知識は、長年、現場でやってきた鈴木さんだからこそ知っているのだとか。

「いいものを作るという点で、山頭火のラーメンもそうなのですが、鈴木ファームも長い歴史をへて築いてこられたものがあるので。これまで築いてきたものを、引き継いでいくという点で、僕らは覚悟をもってやっていきます」

これからも鈴木ファームの美味しい野菜を自宅まで届けていただけるというのは、消費者として実にありがたい。

鈴木ファームのオンライン販売もウェブサイトを新しくなり購入しやすくなった。
https://suzukifarm-usa.com/

※1 鈴木ファームの野菜について
オーガニックの認証(USDA 米農務省の認証)は取得しておりません。日本から種の輸入で検疫を通すことから難しい状態となっております。ですが、生産にあたっては 農薬は一切使用せず、害虫駆除に対しては植物エキス(自家製のニラ、ラッキョウ、せり、葱、ヨモギ他)や、木酢液など化学薬品でない物とオーガニックの認証がある消毒液を使用し、安心して食べて頂けるよう工夫をしております。

Foodsstyle.jpg

©Food's Style USA Inc, 伊郷さんは、写真左より3番目。伊郷さん左、向かって右隣CEOの米田さん

【プロフィール】
伊郷尚弘(いごうたかひろ)
2011年 株式会社プレンティーに入社 研磨機事業 営業職として従事
2013年 当時の海外事業部へ異動(異動を希望した) Food's Style USA Inc.(旧PlentyUSA Inc)設立
2014年 渡米、弊社1号店の山頭火ベルビュー店開店、店長として従事。その後、現在の4店舗のオープニングに携わり、その他事業展開にも携わる

【関連リンク】
Ken Suzuki
Food's Style USA Inc, 農業プレスリリースより(PDF)
鈴木ファームオンライン販売サイト

 

Profile

著者プロフィール
ベイリー弘恵

NY移住後にITの仕事につきアメリカ永住権を取得。趣味として始めたホームページ「ハーレム日記」が人気となり出版、ITサポートの仕事を続けながら、ライターとして日本の雑誌や新聞、ウェブほか、メディアにも投稿。NY1page.com LLC代表としてNYで活躍する日本人アーティストをサポートするためのサイトを運営している。

NY在住の日本人エンターテイナーを応援するサイト:NY1page.com

ブログ:NYで生きる!ベイリー弘恵の爆笑コラム

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