
サミット開催国として舞い上がった挙句、日本は無自覚なままに選択肢を失った...... Kenny Holston/REUTERS
<広島G7サミットで、岸田政権が欧米のリベラルな価値観に強烈にコミットした見返りに得たものは何だったのだろうか......>
アフガニスタン・カブールで、地雷で両足を失った男性の家族 REUTERS/Sayed Hassib
<米国議会でアフガニスタン撤退に関して、そのプロセスの検証が進められようとしている......>
米国議会でアフガニスタン撤退に関して、そのプロセスの検証が進められようとしている。何故、バイデン政権はアフガン撤退時に非常に無様な姿を世界に向けて晒さざるを得なかったのか。その疑問についてホワイトハウスの関与の適切さが問われることになるだろう。
しかし、対アフガニスタン政策の問題は政権高官の単純な責任問題ではない。我々はこの政策の失敗について重く受け止め、対アフガニスタン政策を見直し、真摯に関与を続けていくことが必要だ。
2001年のアフガニスタン戦争後、約2500人のアメリカ人兵士が死傷し、米国だけで1兆ドルを超える血税を費やし、日本政府もそれに次ぐ多大な支援を実施したにもかかわらず、2021年8月にタリバンが首都カブールルに侵攻したことで、欧米の支援を受けたアフガニスタン政府は崩壊した。また、この戦争では、少なくとも、アフガニスタン市民が約4万6000人、タリバンが約5万3000人死亡するなど、多くの命が双方の陣営から失われることになった。
欧米の対アフガニスタン政策が失敗した最大の要因は腐敗だ。腐敗した政府は民衆からの支持を一瞬で失うことは世の常である。タリバン放逐後のアフガニスタン共和国の指導者らはこの例に漏れない存在であった。
欧米に支援されたアフガニスタン共和国の指導者は、欧米諸国との二重国籍者が少なからず存在していた。つまり、現地のアフガニスタン住民にとっては、彼らは欧米と癒着した浮世離れした都市エリートとして映って見えた。その人々が推し進めた中央集権政策に対して、アフガニスタンの住民からの反感が集まることは当然であった。
また、欧米からの巨額の海外援助はフィージビリティスタディが甘い事業に多く投入されて十分に成果を上げなかっただけでなく、その援助はドナー国に逆流して関係者の利権と化していた。そして、現地でダブついたマネーはアフガン社会の元からの腐敗を助長し、汚職や縁故主義の蔓延に一層の拍車がかかるようになってしまった。
つまり、欧米は植民地支配の真似事を21世紀になってアフガニスタンで実行しようとしたのだ。そのような行為が現地人から反発を食らったのだ。イスラム法による厳格だが一貫した司法と清廉潔白さをアピールしたタリバンの支持が回復するのは一定の理があったと言えよう。全ての面で理想的な選択は難しいが、アフガニスタン人は自分たちの国を自分たちの手に取り戻したに過ぎないと言えるかもしれない。
現在、国際社会側はタリバンの行動に影響を与える有効なツールを持ち合わせていない。また、歴史的に見ても同地域に外部から強圧的に変化を加えようとしても効果がないことは明らかだ。ただし、同国の国情の安定は、中長期的に見た世界の安定にとっては重要だ。アフガニスタンの構造的な問題は現状でも解決しているとは言い難い面があるからだ。
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ウクライナのゼレンスキー大統領は21日、広島市内で会見し、ロシアに破壊された東部の要衝バフムトと被爆した当時の広島の姿を重ね合わせ、ウクライナの復興を誓った。写真は平和記念公園を訪れたゼレンスキー氏。5月21日、広島で撮影(2023年 代表撮影)
ウクライナのゼレンスキー大統領は21日、広島市内で会見し、ロシアに破壊された東部の要衝バフムトと被爆した当時の広島の姿を重ね合わせ、ウクライナの復興を誓った。バフムトを掌握したとするロシア政府の発表は否定した。
基調講演には、マルティ・ナタレガワ元インドネシア外務大臣が登壇。「不信感、緊張、紛争という悪循環が世界中で起きている中で、外交と対話による信頼関係を築いている日・ASEANは希望の光」と語った。
1973年から始まった日本とASEAN(東南アジア諸国連合)との関係。1977年には、「心と心」の触れ合う信頼関係を構築することなどの日・ASEAN外交原則を掲げた福田ドクトリンが発表され、両者の関係性は目覚ましい発展と進化を遂げてきた。その友好関係が50周年を迎えることを記念し、国際シンポジウム「新たなステージを迎えた日・ASEAN関係──グローバル・パートナーシップの構築に向けて──」が東京で開催。東南アジアを代表する知識人や次世代の有識者13人が来日し、日本の有識者と共に議論を繰り広げた。
金曜礼拝中のカブールのモスクを警護するタリバン兵 ALI KHARAーREUTERS
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米国、英国、日本、オーストラリアの4カ国は29日、ミャンマー軍事政権が民主化指導者アウン・サン・スー・チー氏率いる国民民主連盟(NLD)を含め40政党を解党処分とすることを決めたことに懸念を表明し、より多様な勢力が参加する形で民政復帰を進めるよう軍事政権に求めた。写真はミャンマー・ネピドーで開催された「Invest Myanmar」に出席するアウンサンスーチー氏で2019年1月撮影(2023年 ロイター/Ann Wang)
米国、英国、日本、オーストラリアの4カ国は29日、ミャンマー軍事政権が民主化指導者アウン・サン・スー・チー氏率いる国民民主連盟(NLD)を含め40政党を解党処分とすることを決めたことに懸念を表明し、より多様な勢力が参加する形で民政復帰を進めるよう軍事政権に求めた。