コラム

安倍元首相の国葬の意味とは──世界各国の国葬事情から

2022年09月02日(金)11時30分

したがって、吉田茂が国葬の対象となった事例に鑑み、仮に安倍晋三元首相を国葬とするならば、その意義はソ連崩壊後の地政学的な世界環境の中で、西側の自由民主主義国としての日本の新たな道筋をつけた、ということになるだろう。

「自由で開かれたインド太平洋」という日本の新たな生命線を示し、世界中の国々と自由貿易協定を結んだ安倍政権の功績は、まさに戦後日本の歩んできた道の集大成と言えるものだった。吉田茂を除く歴代首相を差し置いて、安倍元首相を国葬の対象とする理由は他にはない。

日本が自由民主主義国陣営であるという価値観を伝える場

戦後の日本の国葬は吉田茂・安倍晋三の両名を対象とすることで、日本が明確に西側の自由民主主義国陣営であるという価値観を伝える場となったとみなすべきだ。

ただし、その反面として、安倍元首相は死後も上述の価値観に反対する人々からは批判の対象となり続ける。当然、日本国内には様々なイデオロギーや外国との友好関係を模索する人々がおり、実質的に政治的価値観の称揚を背景とする国葬は物議を醸すことは致し方ない。

今回の国葬は日本の立ち位置を国内外に示す外交的なイベントとなるだろう。私たちもその意味を踏まえて、この国葬に関する理解を深めることが望ましいものと思う。

プロフィール

渡瀬 裕哉

国際政治アナリスト、早稲田大学招聘研究員
1981年生まれ。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。 機関投資家・ヘッジファンド等のプロフェッショナルな投資家向けの米国政治の講師として活躍。日米間のビジネスサポートに取り組み、米国共和党保守派と深い関係を有することからTokyo Tea Partyを創設。全米の保守派指導者が集うFREEPACにおいて日本人初の来賓となった。主な著作は『日本人の知らないトランプ再選のシナリオ』(産学社)、『トランプの黒幕 日本人が知らない共和党保守派の正体』(祥伝社)、『なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか』(すばる舎)、『メディアが絶対に知らない2020年の米国と日本』(PHP新書)、『2020年大統領選挙後の世界と日本 ”トランプorバイデン”アメリカの選択』(すばる舎)

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