コラム

【2020米大統領選】「高齢白人男性」同士の争いを懸念する民主党の支持者たち

2019年05月07日(火)16時00分

現時点での世論調査でサンダースやバイデンがフロントランナーである最大の理由は知名度だ。だが、その状況は今後変わってくるだろう。ニューハンプシャー州で会った有権者がその変化を示唆している。

ガバードのタウンホール・ミーティングで隣に座った30歳前後の若者は、前回の選挙ではサンダースの情熱的な支持者だった。会場の隅々まで響き渡るような大声で、「民主党エスタブリッシュメントがバーニーから選挙を奪った」といまだに2016年の予備選について苦情を言っていたが、2020年にはサンダースを支持しないと決めているようだった。「バーニーの役割は終わった。今のバーニーは体制になってしまっているし、今回はもっといい選択が沢山ある」と話し、ジュリアン・アサンジを支持するツイートをしたガバードや「ユニバーサル・ベーシック・インカム」を唱えるヤングに注目していた。

ヤングのイベントで話を聞いた30代前半の男性も、前回の予備選ではサンダースに票を投じたが、今回は「良い選択肢が多い」と若い候補の中から選ぶつもりのようだ。

demo190507-03.jpg

アンドリュー・ヤングのイベントに来ていた30代前半の医療業界の専門職カップル。男性のほうは前回の予備選でサンダースに投票したが、今回は「良い選択肢が多い」と若手の候補の中から吟味している(筆者撮影)

前回の大統領選では、若者はサンダースを応援するのが格好良いことであり、ヒラリー・クリントンの支持者は隠していなければならないような雰囲気があった。今回はまだ確固としたムーブメントが見られないが、大学のキャンパスでヤングの名前がついたTシャツや「Math(数学、数値的事実から政策問題を訴えるヤングの支持者の合言葉)」というロゴがついた帽子が目立つようになっている。インターネットで若者に最も人気があるのもヤングだと言われている。USA Todayの読者投票でアンドリュー・ヤングをトップに引き上げたのは、こういった支持者だ

若い候補を求めるのは若者だけではない。

ヒッケンルーパーのイベントで「私が本当に出てほしいのはジョー(バイデン)よ」とささやいてくれた70代とおぼしき女性もいたし、ウォーレンのイベントで「私は昔から骨の髄までバーニー(サンダース)派。バーニーが大統領候補でウォーレンが副大統領候補という組み合わせを望む」という白い髭を長く伸ばしているサンダースと同世代の男性もいた。だが、彼らは少数派だ。

意外かもしれないが、ニューハンプシャー州での早期のイベントに参加した有権者から繰り返し耳にしたのが「民主党の指名候補が誰になっても応援するが、サンダースにはなってほしくない」という意見だった。サンダースの熱心な支持者はすでに彼に決めていてほかの候補のイベントに来ないから当然といえるかもしれない。だが、彼らが理由として挙げた「サンダースは、アメリカを敵と味方に分けるという点で左のトランプ」という意見は注目に値する。分断したアメリカを統一させたい、という渇望は、特に若手候補のイベントで強く感じる。

現時点では、あまりにも候補の人数が多いためにサンダースとバイデンは知名度で支持を集めている。だが、若手集団からニューハンプシャー州やアイオワ州で数人のスターが突出してきた場合には、サンダースとバイデンを脅かす有力な候補として全米の有権者に新たな選択を与える。そうなったら選挙の様相はがらりと変わるだろう。

ニューズウィーク日本版 世界が尊敬する日本の小説36
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年9月16日/23日号(9月9日発売)は「世界が尊敬する日本の小説36」特集。優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


プロフィール

渡辺由佳里

Yukari Watanabe <Twitter Address https://twitter.com/YukariWatanabe
アメリカ・ボストン在住のエッセイスト、翻訳家。兵庫県生まれ。外資系企業勤務などを経て95年にアメリカに移住。2001年に小説『ノーティアーズ』(新潮社)で小説新潮長篇新人賞受賞。近著に『ベストセラーで読み解く現代アメリカ』(亜紀書房)、『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』(晶文社)などがある。翻訳には、レベッカ・ソルニット『それを、真の名で呼ぶならば』(岩波書店)、『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP社、日経ビジネス人文庫)、マリア・V スナイダー『毒見師イレーナ』(ハーパーコリンズ)がある。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

台湾、過去最大の防衛展示会 米企業も多数参加

ワールド

アングル:日米為替声明、「高市トレード」で思惑 円

ワールド

タイ次期財務相、通貨高抑制で中銀と協力 資本の動き

ビジネス

三菱自、30年度に日本販売1.5倍増へ 国内市場の
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story