短歌を始めたときは、周りから贅沢な趣味だねとよく言われた。心に余裕がある人しかできないものでしょうとも言われた。

確かに57577のリズムを持つ31文字の定形詩を作ることは、現代のライフスタイルからすれば役に立ちそうにない「無用」に見えるかもしれない。

私も最初はそうだった。日本での暮らしを精いっぱい頑張らなきゃいけないのに、私はなぜのんびりと歌を詠んでいるのだろうと思ったときもあった。

短歌を詠み続けて9年。私にとって短歌は、自分を表現する方法でありつつも、私という人間を強く、大きく成長させてくれる大事な存在になった。つまり、「無用の用」だ。

31文字しか使えない言葉の制約の中で自分の想いを表現することは、詠んでいくうちに自分の心と自然と向き合うことでもある。そのため自分を深く理解でき、心の中にある余計な感情を捨てることもできる。だからこそ、私にとって短歌は「用」なのだ。

近年の日本社会は、デジタル化が進むなか、衣食住に関わる便利さや効率のよさをいかに実現していくかに関心が高まっている。もちろん時代の流れもあり、それらは無視できないものだと思う。

ただし、今まで日本の文化や社会を支えてきた「無用の用」が薄れてしまうのではないかと、時々残念な気持ちになる。あくまで私個人の意見だが、今すぐ役に立ちそうでなくても、「無用の用」を信じ、やり続けることを評価してくれる豊かな社会であってほしい。

短歌が私に教えてくれたように、「無用の用」はきっと世界の人々へと送る日本のメッセージなのだ。

 止まっているようで静かに流れゆく
  茶室の風が我を揺らして
   ――カン・ハンナ

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ソウル出身。2011年に来日し、2020年に歌集『まだまだです』で現代短歌新人賞受賞。NHKラジオ「ステップアップハングル講座」に出演し、起業家としてコスメブランドも立ち上げた。著書に『コンテンツ・ボーダーレス』
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