コラム

北京五輪で思った。「君が代」の「君=あなた」でもういい

2022年02月22日(火)16時55分
周 来友(しゅう・らいゆう)
小林陵侑

金メダルを獲得したスキージャンプの小林陵侑選手はメダル授与式で「君が代」を口ずさんでいた KAI PFAFENBACH-REUTERS

<私は最近、「君が代」の「君」は天皇ではないという解釈があることを知った。日本では大声で斉唱しない人が多いが、こんな国歌こそ平和の祭典にふさわしい>

北京冬季オリンピックが閉幕した。日本の最初の金メダルは、表彰台で跳び上がって喜んだスキージャンプの小林陵侑。

中国にもファンが多いフィギュアスケートの羽生結弦が4位に終わったのは残念だったが、五輪精神を体現したチャレンジは中国でも感動をもって伝えられた。

興奮と感動を与えてくれたスポーツの祭典。自国の国旗の下、国歌が流れる瞬間は、見る者全ての胸を熱くしたことだろう。

実際、国歌は多かれ少なかれ自国に対する帰属意識や誇りを強めるものだ。オリンピックのみならず、大規模なスポーツ大会には国歌が不可欠。

試合前に有名歌手が独唱することもあれば、サッカーなど代表チームの試合では双方の国歌が演奏され、五輪ではメダルの授与式で優勝選手の国歌が流される。

ただ、そんな中にあっても、日本では歌わない選手が比較的多い。そのため選手たちが「君が代」を斉唱するかどうかが議論になったこともあった。

今回の冬季五輪ではそんな話題は出なかったが、個人的にその点も気にして見ていた私としては、ジャンプの小林選手が「君が代」を口ずさんでいたことが印象に残っている。

幼稚園から国歌である「義勇軍行進曲」を教え込まれる中国では、何かの行事の際にはみな当然のように大声で歌う。一方、日本人の多くはスポーツ大会の場、あるいは学校の行事で国歌を大声で斉唱しない。

理由は明白。もちろん私も知っている。

古今和歌集の和歌から歌詞を取った「君が代」は、その「君」が天皇を指すとされ、日本教職員組合(日教組)を中心とするリベラル派から長年にわたり、天皇崇拝の歌である、戦後は国民主権となったのだから公教育の場に持ち込むべきではない、斉唱を強制すれば軍国主義の戦前と同じになる──などとして排斥されてきた。

そうした経緯もあって、「君が代」は多くの日本人にとって、なにやら縁遠く、面倒くさい歌になってしまったらしい。実際、歌う機会がほとんどないまま大人になった人も少なくないのではないか。

また、歴史的経緯から沖縄出身の人は特に歌いたがらないと聞いたこともある。

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請1.8万件増の24.1万件、2カ

ワールド

米・ウクライナ鉱物協定「完全な経済協力」、対ロ交渉

ビジネス

トムソン・ロイター、25年ガイダンスを再確認 第1

ワールド

3日に予定の米イラン第4回核協議、来週まで延期の公
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story