コラム

日本の小学生にもプチ・インターンシップを!

2021年03月20日(土)13時30分
トニー・ラズロ

子供のためだけでなく地域社会のためになる Kohei_Hara/iStock.

<ドイツには小学生が参加する一日インターンシップがあり、職業を体験する貴重な機会となっている>

ひな祭りが過ぎ、こどもの日が近づくのを機に、自分の子供時代のことを思い返してみたい。

アメリカのニュージャージー州での話だ。小学4年生のとき、近所の年配者から、週1回くらいお手伝いをしてくれないかと頼まれた。「冬は雪かき、夏は雑草取りなどをしてほしい」。僕は「力仕事なら任せて」と承諾した。

でも驚いたことに、何も仕事がないという日が多かった。そういうときは野菜の栽培方法を学んだり、料理を作る作業をひたすら見ているのが「任務」。いま思うと、アルバイトというよりは何かの研修のようだった。

あの時の子供が成人し、日本に住んで30年もたつ。そして気が付くと、家を通り掛かる近所の子供たちに、自分が声を掛けている。車庫前の庭の一角を指して、「○○ちゃんなら、そこで何を育てる? ソラマメがいいかな、それともピーマン?」という具合に。

相手が立ち止まってやりとりに関心を示したら、そこを出発点に話が続く。「種まき相談」がプチ生物学講座シリーズに発展するときもある。庭で見つかったさなぎがもうすぐチョウになるか、ガになるか、気になって見守っている「生徒」が2、3人いる。

「こどもの日」には働くドイツ

五節句に由来するひな祭りとこどもの日は極めてアジア的なもので、西洋にはそれに匹敵する行事はない。しかし、同じような名前の日ならドイツにある。4月の第4木曜日は、「女の子の日」であり「男の子の日」だ。ただし、子供は好きなものを食べて遊ぶわけではない。むしろ働くのだ。

この日は、5年生以上の子供は希望すれば学校を休み、職業体験のプログラムに参加できる。ほのぼのとした一日インターンシップで、たいてい企業や行政機関、医療機関などがセッティングしてくれる。

わが家の息子はベルリンの小学校在学中、あるときは図書館に行って本の整理を済ませた後、ちょっとしたロボット工学研修にも参加できた。次の年は、たしか同時通訳体験を選んだ。ラジオ局で天気予報を読み上げるという貴重な体験をしたこともある。

プログラムが少なかったり、応募が遅れたりした場合、生徒は「残りもの」を選ぶことになる。例えば「3K労働」系はさすがに人気がなかった。申し込み制で早い者勝ちなので、こうなるのは仕方がない。

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、方向感欠く取引 来週の日銀

ビジネス

米国株式市場=3指数下落、AIバブル懸念でハイテク

ビジネス

FRB「雇用と物価の板挟み」、今週の利下げ支持=S

ワールド

EU、ロシア中銀資産の無期限凍結で合意 ウクライナ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    受け入れ難い和平案、迫られる軍備拡張──ウクライナの選択肢は「一つ」
  • 4
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 5
    【揺らぐ中国、攻めの高市】柯隆氏「台湾騒動は高市…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 8
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 9
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 7
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story