コラム

赤ちゃん「泣いてもいいよ」は口で言おう──ステッカーまかせで失われる自然なコミュニケーション

2019年11月15日(金)18時15分
西村カリン

実は、マタニティマークも私はあまり好きではない。妊婦であることは口で伝えられるはずだからだ。とはいえ、私も妊娠中にマタニティマークを付けた。それでも電車ではほとんどの乗客が気付いてくれなかった。結局、つわりなどでつらいときに、優先席に座っている人に「失礼ですが、妊娠中で......」と頼んだことが何回もある。他の妊婦のために席を譲るよう求めたこともある。「外国人だからはっきり言うんだな」と、相手は思ったかもしれない。

確かにフランス人にとっては電車、バス停、スーパーや喫茶店で知らない人に声を掛けるのは普通のことで、全く違和感はない。みんな言いたいことを言う。時々ケンカになるが「仕方がない、社会はこんなもんだ」と思っている。

それに対して、日本では知らない人とのコミュニケーションの機会がなくなりつつある気がする。電車の中では周りを無視し、スマホを操作する人が年々増えている。職場でも、若者は他人とのコミュニケーションができないとよく言われている。これが結婚相手との出会いが少なくなったことの1つの原因ではないかとも思う。残念ながら、何でもかんでもメッセージステッカーでという動きが広がれば、自然なコミュニケーション能力が低下しかねない。

ということで、万が一どこかで私を見掛けたら、ぜひ声を掛けて下さい。

magTokyoEye_Nishimura.jpg西村カリン
KARYN NISHIMURA
1970年フランス生まれ。パリ第8大学で学び、ラジオ局などを経て1997年に来日。1999年からフリージャーナリスト、2004年からAFP通信東京特派員。著書に『不便でも気にしないフランス人、便利なのに不安な日本人』など。

<本誌2019年11月12日号掲載>

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