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「突然キレる」毒親のトラウマに苦しんだ男性が、「逃げない時間」を過ごし人生を取り戻した方法

2025年11月30日(日)11時30分
印南敦史(作家、書評家)

インターネットで知った心理的コーチング


 彼女の両親とは何度も顔を合わせており、井上さんをとても可愛がってくれていた。特に彼女の父親は、親しみを込めて、「秀人」と呼び捨てで呼んでいたのだが、井上さんの父親はそれが気に入らなかったようだ。
「何で俺の息子を呼び捨てにするんだ!」
 突然、激昂した井上さんの父親は、周囲が驚きのあまり言葉を失うほど、1人でひたすら暴言を吐き、彼女の両親を罵倒し続けた挙句、「ふざけんな! やってられるか!」と言って家に帰ってしまった。(149ページより)

先方の両親が「気にしなくていいよ。水に流そう」と理解してくれたため、なんとか結婚できたが、以後も父親はことあるごとにキレては暴れ、やがて井上さんは実家に帰らなくなった。そして、飲酒の機会と量が増えていった。

そんな中で救いになったのが、インターネットで知った心理的コーチングだった。コーチングを受けることで、生まれて初めて自分自身や家族、仕事や過去に向き合い、「逃げない時間」を過ごしたのだ。それは「自分軸」を見つける作業だったという。


「自分の強みや弱み、コンプレックスや好きなこと、嫌いなことがわかりました。喜怒哀楽を感じることができるようになり、僕の『価値観』が炙り出されると、これまで抱えていた悩みが解決できました。その上で、自分の人生における目的や役割まで見つけることができたのです」(154ページより)

なお父親は飲酒して転んで頭を強打し、そのまま認知症を発症。母親が在宅で介護していたものの誤嚥性肺炎を起こし、63歳の若さで亡くなった。

一方の井上さんは現在、高校3年生、中学2年生、小学2年生の3人の子の父親。妻とは、週に1度は2人きりで出かけるほど仲がいいそうだ。長く闘い続けてきて、ようやく安心できる環境に行き着くことができたのだろう。


『「毒親の連鎖」は止められる――トラウマの呪縛を克服した10人のケース』
「毒親の連鎖」は止められる――トラウマの呪縛を克服した10人のケース
 旦木瑞穂 著
 鉄人社

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[筆者]
印南敦史
1962年生まれ。東京都出身。作家、書評家。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。他に、ライフハッカー[日本版]、東洋経済オンライン、サライ.jpなどで連載を持つほか、「ダ・ヴィンチ」などにも寄稿。『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』(日本実業出版社)、『この世界の中心は、中央線なのかもしれない。』( 辰巳出版)など著作多数。2020年6月、日本一ネットにより「書評執筆本数日本一」に認定された。


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