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「突然キレる」毒親のトラウマに苦しんだ男性が、「逃げない時間」を過ごし人生を取り戻した方法

2025年11月30日(日)11時30分
印南敦史(作家、書評家)

結婚を決意、両家顔合わせの食事会で事件が

そんな日常は、井上さんの性格にも影響を与えることになる。


「父の顔色や評価を気にしてばかりいた僕はいつしか、他人の評価という鎖でがんじがらめになっていました。他人からどう見られているかを気にしすぎるあまり、たとえば店に入れば、店員に『何も買わないのか』と思われそうで、何も買わずに出ることができないとか、寂しい人だと思われそうだから1人で飲食店に入れないとか、『こんなこともわからないのか』と思われそうだから質問ができないとか、親しい友人であっても、トイレなどで席を外した瞬間から自分の悪口を言われてないか不安になるなど、他人の目や評価を常に過剰に気にしてしまいました」(144ページより)

他人の評価ばかりを気にして生きてきた井上さんはやがて、ストレスのはけ口として高校生でアルコールに手を出す。最初こそ罪悪感があったものの、飲むと次第に「親に復讐しているかのような高揚感」を覚えるようになった。そして、飲酒によって「自分をコントロールできている」と錯覚するようにもなった。

大学卒業後に大手飲食チェーンに就職してからも、上司や先輩に必要以上に気を遣い、相手の意見を全面的に受け入れ、自分の意見は封印した。

25歳で転職を決意したときには父親から、「転職先では生え抜きや年下の人間に負けることになるんだ! 負け犬になって後悔するぞ!」と反対され、「もし転職するならもう、お前は井上の姓を名乗らなくてもいいからな」と言われる。

「もうこれ以上、何を言っても無駄だ」と冷めていくような感覚を覚えつつも、結局は転職をあきらめた。父親は「俺は正しかっただろう」と得意そうに同意を求めてきたという。

これだけでもかなり異常だが、さらに驚かされるのは井上さんが結婚を決めたときのエピソードだ。職場で出会い、2年ほど交際していた同い年の女性の妊娠が分かったため結婚を決意。ことは順調に進んだが、両家顔合わせの食事会で事件が起こる。

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