最新記事
BOOKS

「突然キレる」毒親のトラウマに苦しんだ男性が、「逃げない時間」を過ごし人生を取り戻した方法

2025年11月30日(日)11時30分
印南敦史(作家、書評家)

母親が罵倒されていても、自室に避難し怯えていた

私にとっても、これは納得できる話だった。高校生の頃に母と衝突した際、勇気を出して自分には親から受けたトラウマがあると思うと明かしたところ、「トラウマという言葉はそれほど簡単に使えるようなものではない」と、あくまで「言葉の用法」として一蹴されたことがあるからだ。何にしても理屈でねじ伏せようとする人だった。

ともあれトラウマを抱えた人は現実的に多く、本書に登場する10人もまさにそれにあたる。しかも『「毒親の連鎖」は止められる』という書名から分かるように、「毒親」に苦しめられた人たちばかりである。文章を通じてそれぞれの道のりをたどると、「普通」ではない環境で育ったつらさが伝わってくる。

突然キレて怒鳴り散らす父親と、おとなしい母親のもとで育ったという関東在住の井上秀人さん(44歳)もそのひとりだ。


「今思うと父は、よく社会でやってこれたなと不思議になるほど、普通ではありませんでした。異常に学歴や世間体を気にしていて、プライドが高く、いつも変なところでキレるんです。家族で出かけたり、外食したりする時なんて、苦痛でしかありませんでした。何時に出かけるって決めても、父が準備できたタイミングで家族の誰かが準備できていないと、決めた時間より前でもブチギレます。外出先でも、何か気に入らないことがあると突然怒鳴り散らすんです。あまりの大声に、他のお客さんも店員さんたちも見ますし、子ども心に恥ずかしくて仕方がありませんでした」(140ページより)

父親は家の中でも突然キレては怒鳴り散らし、家族を萎縮させた。常に緊張している家庭に暮らしながら井上さんは、父親と極力関わらないようになっていく。母親が罵倒されていても、自室に避難し怯えていたという。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イラン、米国との交渉を否定 国連大使「唯一の言語は

ワールド

トランプ氏、米軍は「永遠に」戦争可能 大勝利に万全

ワールド

トランプ氏、イランは協議望むも「すでに手遅れ」 指

ワールド

中東紛争4日目、攻撃広がり犠牲増加 想定以上に作戦
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 2
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズった理由
  • 3
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び率を記録した「勝因」と「今後の課題」
  • 4
    核合意寸前、米国がイラン攻撃に踏み切った理由
  • 5
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 6
    人気の女性インフルエンサー、「直視できない」すご…
  • 7
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 8
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 9
    イランへの直接攻撃は世界を変えた...秩序が崩壊する…
  • 10
    「日本食ブーム」は止まらない...抹茶、日本酒に「あ…
  • 1
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 2
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 3
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 4
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 5
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 6
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 7
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 8
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 9
    中国で今まで発見されたことがないような恐竜の化石…
  • 10
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中