リアルすぎる核スリラー『ハウス・オブ・ダイナマイト』が暴く、抑止神話の脆さ
A CALL TO ACTION
もし人類を守る責務を負った人たちが感情を持つ普通の人間なら、なぜ私たちは世界の運命をそのうちの一人に委ねる仕組みを許すのか──。
この問いへの答えを探すため、ビグローとオッペンハイムは国防総省やCIAの関係者に「大統領はこの映画が描くような状況に関して、どれくらい訓練しているのか」と尋ねた。答えは驚くべきものだった。
「ほとんど訓練していないという話だった」と、オッペンハイム。
「大統領は文民として選ばれ、その後ずっと自分のそばにあることになる『核のフットボール(核攻撃の許可を出す装置が入った黒い革かばん)』の説明をせいぜい1回受ける程度。後はほとんどまともに関与しない。世界で最も大きな権限を持つ人間が、経験と知識は最も少ない。非常に恐ろしい現実だ」
ウォーカー大佐を演じるファーガソン EROS HOAGLAND/NETFLIX ©2025
不可能な問いを乗り越えて
映画のラストでエルバ演じる大統領は、「報復か静観か」という究極の決断を迫られる。カーブラーの言葉を借りれば、それは「自殺か降伏か」の選択だ。衝撃と恐怖を感じながらも集中している大統領の表情が、作品の核心を示す。
問題は、善意はあっても欠陥を持つ人間である大統領が誤った判断をする可能性ではない。どんなに理想的な指導者でも、システムがその人物に不可能な判断を強いることだ。





