最新記事
映画

リアルすぎる核スリラー『ハウス・オブ・ダイナマイト』が暴く、抑止神話の脆さ

A CALL TO ACTION

2025年11月6日(木)10時27分
H・アラン・スコット

もし人類を守る責務を負った人たちが感情を持つ普通の人間なら、なぜ私たちは世界の運命をそのうちの一人に委ねる仕組みを許すのか──。

この問いへの答えを探すため、ビグローとオッペンハイムは国防総省やCIAの関係者に「大統領はこの映画が描くような状況に関して、どれくらい訓練しているのか」と尋ねた。答えは驚くべきものだった。

「ほとんど訓練していないという話だった」と、オッペンハイム。

「大統領は文民として選ばれ、その後ずっと自分のそばにあることになる『核のフットボール(核攻撃の許可を出す装置が入った黒い革かばん)』の説明をせいぜい1回受ける程度。後はほとんどまともに関与しない。世界で最も大きな権限を持つ人間が、経験と知識は最も少ない。非常に恐ろしい現実だ」

ウォーカー大佐を演じるファーガソン EROS HOAGLAND/NETFLIX ©2025ウォーカー大佐を演じるファーガソン EROS HOAGLAND/NETFLIX ©2025

不可能な問いを乗り越えて

映画のラストでエルバ演じる大統領は、「報復か静観か」という究極の決断を迫られる。カーブラーの言葉を借りれば、それは「自殺か降伏か」の選択だ。衝撃と恐怖を感じながらも集中している大統領の表情が、作品の核心を示す。

問題は、善意はあっても欠陥を持つ人間である大統領が誤った判断をする可能性ではない。どんなに理想的な指導者でも、システムがその人物に不可能な判断を強いることだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、グリーンランド特使にルイジアナ州知事を

ビジネス

外貨準備のドル比率、第3四半期は56.92%に小幅

ビジネス

EXCLUSIVE-エヌビディア、H200の対中輸

ワールド

25年の中国成長率、実際は2─3%台か 公式値の半
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 5
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 6
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    70%の大学生が「孤独」、問題は高齢者より深刻...物…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 9
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中