18分で世界が終わる――アカデミー賞監督が描く核攻撃の恐怖と沈黙の代償
A CALL TO ACTION
「リアルタイムで伝えたかった」と、脚本を書いたノア・オッペンハイムは話す。「18分がいかに短いか、観客に体感してもらいたかった」
核戦争の脅威が忘れ去られたのは「冷戦が終わった」からだと、オッペンハイムは言う。「ソ連が崩壊して、誰もが『やれやれ、これで脅威は去った』と安堵してしまった」
だが実はそうではなかった。脅威は去るどころか姿を変え、より強大かつ複雑になった。「世界には今、1万2000発以上の核弾頭がある」と、ビグローは補足する。「9カ国が核を保有し、そのうちNATO加盟国は3カ国にすぎない」
核の脅威は決して消えていない。世界がそれに沈黙しているだけだ。この沈黙を打ち破るため、ビグローは自身の輝かしいキャリアでも最大の衝撃力を持つ映画を撮った。
彼女を突き動かしたのは何か。それは市民としての責務だった。
ロンドンで開かれた上映会(10月4日) MAX CISOTTIーDAVE BENETT/GETTY IMAGES FOR NETFLIX
観客は受け身の存在ではない
ビグローが女性初のアカデミー賞監督賞を獲得した『ハート・ロッカー』(2008年)は、イラク戦争中の米軍の爆発物処理班の活動を描いた作品だ。続く『ゼロ・ダーク・サーティ』(12年)では、9.11テロの首謀者と目されるウサマ・ビンラディンの行方を追うCIA分析官たちの執念をつぶさに表現した。





