最新記事
BOOKS

増える熟年離婚、「浮気や金銭トラブルが原因」ではない...なぜうまく行かないのか?

2025年10月21日(火)11時35分
印南敦史(作家、書評家)
熟年離婚する夫婦

写真はイメージです aijiro-shutterstock

<今や離婚の4組に1組が熟年離婚の時代。飲みにも行かず、浮気もしない出版社勤務57歳男性が妻に逃げられた理由は>

『ルポ 熟年離婚――「人生100年時代」の正念場』(朝日新聞取材班・著、朝日新書)によれば、長く連れ添ってきた夫婦が20年以上の歳月を経て離婚する「熟年離婚」の割合が増えているらしい。1947年に統計を開始して以降、過去最高を更新しているというのだ。
『ルポ 熟年離婚――「人生100年時代」の正念場』
2023年の離婚全体に占める割合は23.5%だそうなので、離婚した夫婦のうち、4組に1組が熟年夫婦ということになる。

その理由として本書は、時代の変化とともに女性のエンパワーメントが高まり、結婚観、離婚観、パートナーシップのあり方が少しずつ変貌してきたことを指摘する。

確かにそのとおりなのだろうし、本書に登場する熟年カップルの道程を追ったルポが、朝日新聞デジタル上で大ヒットコンテンツ化しているという話にも納得できる部分はある。

熟年離婚に至る原因も多種多様だが、夫の「役職定年」を発端とするケースは最も起こりがちだと言えるかもしれない。

冒頭に登場する「CASE 1」がそのいい例だ。本書で紹介されている40の熟年離婚事例はそれぞれが強烈なのだが、私にはこの事例が一番印象に残った。関東に住む女性(51)が、出版社に勤める夫(57)との離婚調停を申し出たというもの。ここにも役職定年が大きく絡んでいる。

夫は出版社勤務の編集者で、管理職。友人は少なく、飲みにも行かず、浮気もなし。古いレコードなどを集めるコレクターで、自室にこもってはネットオークションばかり見ていたのだという。

趣味にはお金をかけていたようだが、ここからは、コミュ障気味ではあるものの静かな夫であるようにも思える。

だが、決してそうではなかったようだ。

企業経営
ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パートナーコ創設者が見出した「真の成功」の法則
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国軍機、空自戦闘機にレーダー照射 太平洋上で空母

ビジネス

アングル:AI導入でも揺らがぬ仕事を、学位より配管

ワールド

アングル:シンガポールの中国人富裕層に変化、「見せ

ワールド

チョルノービリ原発の外部シェルター、ドローン攻撃で
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 6
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 9
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 10
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中