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増える熟年離婚、「浮気や金銭トラブルが原因」ではない...なぜうまく行かないのか?

2025年10月21日(火)11時35分
印南敦史(作家、書評家)

そのうちパワハラで訴えられるんじゃないか


 怒りっぽく、家では、「うるさいな」「バカか」「クソが」とよく怒鳴った。「俺の稼ぎで食べているんだ。お前、一人じゃ何もできないだろう」と暴言も吐かれた。
 お金には細かく、電気代の明細を持ってきて「高すぎる。冷房をつけっぱなしにしていたんじゃないか」と文句を言う。自分のネット代は棚に上げていた。(14ページより)

私立大附属の中高一貫校に進学したいと相談してきた長男に対しては、「そんな金はない」「俺は私立には行かせてもらえなかった」と返答。長男は父親に近づかなくなったというが、当然の話である。かくして5年ほど前から、一軒家の中で家庭内別居状態になる。


 コロナ禍でリモートワークとなった夫の部屋から、「こんなこともできないなんてお前、バカか」と部下を怒鳴る声が聞こえてきた。そのうちパワハラで訴えられるんじゃないかと心配していたら、23年4月、夫は会社から「役職定年」を宣告された。(15ページより)

夫の部下がうつになったり、退職者が相次いだことを原因とする、事実上のリストラだった。営業職へ異動となった夫の給料は2割近くダウン。しかもその半年後、夫は女性に相談せず広告会社に転職した。給料はさらに減り、家のローンや保険の支払いなどを差し引くと、生活費のやり繰りが厳しくなった。

長男が関西の大学に進学してからは夫婦だけの生活になったが、耐えきれなかった女性は実母の介護を理由に実家へ戻る。

法律上の夫婦は互いに生活を支える義務があると民法第760条に定められているため、月々の生活費である婚姻費用を請求したが、「勝手に実家に行ったので払わない」と言われ、離婚調停に踏み切ったという。

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