自民党総裁選「政策継承」が争点に...小泉氏は持論を封印し「現実路線」へ
今回の主要政策として掲げる「2030年度までの平均賃金100万円増」も「医療、介護など公定価格分野の処遇改善」も「官公需における価格転嫁の徹底」も、こうした基本方針を踏襲している。訪日旅行者を6000万人に増やす目標も、石破首相がすでに今年3月に達成に向けた計画策定を指示している。
前出の関係者は「衆参ともに少数与党となる中で、実際に政権運営をするときのことを考えなければいけない。言いっぱなしは通用しないというのが側近の間での共有認識だった」と明かす。陣営の衆院議員は「どの野党とも組めるアプローチだ」と語る。小泉氏自身も「実現できないような政策を打ち出せない」と割り切っているという。
一方で、数少ない「独自色」もある。その一つが外国人問題に関する「アクションプラン」の策定だ。不法滞在など違法行為の防止、医療保険制度などの不適切利用、不動産取得などの透明化のため年内にまとめるという。
また、「デフレ時代の縮み志向の経済運営から、インフレ時代の新たな経済運営へ」と掲げた点も一歩踏み込んだ。陣営の参院議員は「円安、物価高対策で消費者の視点が足りなかった反省がある」と説明。政府がデフレ脱却を宣言していない中であえて「インフレ時代」に踏み込んだことについて、前出の関係者は「小泉氏のメッセージが込められている」と解説する。新総裁に選ばれれば、よりインフレを意識した舵取りになる可能性がある。
ただ、小泉氏や林氏のこうした政策がどこまで支持を得られるかは不透明な部分もある。国会議員や党員・党友の中で「変化」を強く求める声が広がれば、既存政策の継承自体がマイナスと捉えられかねないからだ。ライバルと目される高市早苗前経済安全保障担当相が「赤字国債」の発行を容認するなど積極財政の姿勢を鮮明にする中、政策の妥当性をどこまでアピールできるかが問われることになる。