映画『ヒンド・ラジャブの声』が世界に届ける、6歳少女「最期の訴え」とイスラエルの暴虐

第82回ベネチア国際映画祭のレッドカーペットでヒンド・ラジャブの遺影を掲げるカウテール・ベン・ハニア監督(写真左、9月3日) Lucrezia Granzetti via Reuters Connect
<ベネチア国際映画祭・銀獅子賞受賞作。イスラエル軍の攻撃におびえ、死に囲まれながら助けを求め続けた少女の叫びが世界を駆け巡る>
ヒンド(6歳の少女):迎えに来て助けて!
救急隊:迎えに来てほしいのね。
ヒンド:すごく怖いの、お願い! 迎えに来て!
誰かに電話して、助けに来るように頼んで! お願い!
救急隊:周りは銃声が聞こえるの?
ヒンド:そう、迎えに来て! お願い!
救急隊:今すぐに迎えに行きたいけど(イスラエル軍)行かせてくれない、ごめんね。
救急隊:迎えに行くね。迎えに行けるように救急隊は今準備してる!
イスラエル軍に殺害されたパレスチナ人の少女の実話をもとにした映画『The Voice of Hind Rajab(ヒンド・ラジャブの声)』が、第82回ベネチア国際映画祭でプレミア上映され、銀獅子賞(審査員大賞)を受賞した。
「映画がヒンドを生き返らせ、彼女に加えられた残虐行為を消し去ることはできません。しかし彼女の声を残すことはできます」
授賞式で監督のカウテール・ベン・ハニアはそう語ったと、彼女の出身国チュニジアのラジオ局「モザイク」が伝えている。
24分間にわたって観客のスタンディングオベーションを受けながら、ベン・ハニア監督はさらに「ヒンドの物語は彼女1人だけのものではなく、ジェノサイドに苦しむ人々全体の悲劇です。加害者であるイスラエル政府は罪を犯しながらも罰せられずにいます」と声を詰まらせた。
また、監督は受賞スピーチの中で、この賞をパレスチナ赤新月社とガザで命を救う人々に捧げたいと語った。そして「『ヒンド・ラジャブの声』はガザの声であり、世界への救難信号でした。しかし誰も応えてはくれませんでした。それでもヒンドの声は、責任追及と正義の実現の日まで鳴り響き続けるでしょう」と強調した。
さらに、監督は「ヒンドの声は、裁きと正義が果たされるその時まで響き続けます。私たちは皆、映画の力を信じている。だからこそ今夜こうして集うことができました。映画は、埋もれてしまったかもしれない物語を語り直す勇気を私たちに与えてくれるのです」と言葉を結んだ。