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もし台湾で有事が起きたら、日本はどうなるのか?――迫る危機と日本が直面する選択【note限定公開記事】

WHAT JAPAN CAN AND SHOULD DO

2025年8月22日(金)08時05分
河東哲夫(本誌コラムニスト、元外交官)
小銃を手に訓練する自衛隊のイメージ写真

自衛隊は米軍とセットで機能する構造だが共同作戦の態勢は整っていない Josiah_S/Shutterstock

<台湾で「もしもの事態」が起きたら、日本は本当に無関係でいられるのか。 遠い海の向こうの話に思えるかもしれないが、実は私たちの暮らしや選択にも直結する問題だ>


▼目次
1.台湾有事は「日本の問題」でもある
2.日本にできることは「抑止力」を高めること
3.世界の中で日本が果たせる役割とは

1.台湾有事は「日本の問題」でもある

台湾には何度か行った。生活水準は日本とほぼ変わらないし、信用できる人が多いし、自由でオープンだ。

タクシーの運転手もガイドも口をそろえて、「そんなに豊かでなくてもいいから、今の自由がいい」と言う。ここを中国が武力で制圧しようとするのは許せない......そう思わせる。

それに台湾の現状維持は、日本自身の安全保障、社会の自由の維持に関わる。台湾を中国が制圧すれば、米海軍は日本の基地から南下して東南アジア、中東方面に展開することが難しくなる。

その結果、在日基地の意味が減少すれば、米軍は日本から去るだろう。そうすれば尖閣はもちろん、隣接する日本の先島(南西)諸島の防衛も難しくなり、中国は沖縄にも触手を伸ばしてくるだろう。

だから「台湾有事は日本有事だ」と安倍晋三元首相は言ったのだ。

「日本有事」、それは法的に言えば、日本自身が武力攻撃を受けるとき、あるいは「日本と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が日本の存立、国民の生命、自由及び幸福追求の権利を根底から覆す明白な危険がある事態」のことを言う。

これは安倍内閣時代、いわゆる武力攻撃事態対処法に定められた。

この時には閣議決定、国会の承認決議を経て自衛隊が出動できる。なお台湾防衛で自衛隊が出動し、中国に損害を与えれば、日本本土が中国軍の攻撃を受ける危険性も出てくる。

この態勢には、いくつか問題がある。例えば、台湾有事が起きたときの日本が連立政権だったとする。連立与党の閣僚が反対すると、閣議決定ができない。

たとえその閣僚を更迭して首相が代行し、閣議を通しても、国会の承認を得ることは難しい。

緊急だからということで、国会承認は事後に得ることにして、自衛隊がしゃにむに出動するとする。法的にそれは可能だが、その先に別の法的・軍事作戦上の問題がある。

まず、自衛隊単独では対処が難しい。自衛隊は日本を防衛するためにつくられているので、海外で作戦を展開する兵器体系は持っていない。

軽空母に類する艦船も所有しているが、他の護衛艦や航空機と船団を構成して、独自の作戦を海外で展開する力はない。

2.日本にできることは「抑止力」を高めること

日本の防衛は、米軍を抑止力(敵を脅して近寄らせない)の大きな柱としているので、自衛隊は米軍と共に戦ってナンボのものなのだ。例えば日本の海自艦船の重要な役目は米国の空母艦隊等の護衛・哨戒なのだ。

そして、米軍と自衛隊が共同作戦を実行するための態勢は整っていない。

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【note限定公開記事】もし台湾で有事が起きたら、日本はどうなるのか?――迫る危機と日本が直面する選択


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