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トランプ再登場で米中はどう動くか──台湾侵攻シナリオが示す未来【note限定公開記事】

IF THE FIGHTING COMES 

2025年8月21日(木)08時05分
グレン・カール(コラムニスト、元CIA工作員)
オーバルオフィス内で真剣な表情を見せるトランプ前大統領の横顔

トランプは武力行使の可能性については口をつぐむ「曖昧戦略」を踏襲しつつ SIPA USA―REUTERS

<中国は「戦わずして勝つ」という孫子の兵法を掲げつつ、台湾統一の野望を隠さない。一方、アメリカは抑止と威嚇のはざまで揺れている>


▼目次
1.高まる米中対立の危機感
2.アメリカは「曖昧さ」と「威嚇」で牽制
3.有事シナリオ、日本も避けられぬ渦中へ
4.シミュレーションが突きつける、惨烈な現実

1.高まる米中対立の危機感

戦わずして勝つ――孫子の兵法に、中国政府の戦略・戦争計画策定者は誰よりも精通しているはずだ。

ところが習近平(シー・チンピン)国家主席は、共産主義国家の明確な優先事項の1つである台湾統一を目指すなか、この国家戦略の基本的政策を曖昧にしている。

習政権は2022年8月、22年ぶりの台湾白書を発表、「武力行使を放棄しない」姿勢を示した。

アメリカの防衛アナリストらは中国が早ければ27年(一説には25年)にも台湾に侵攻すると警告。台湾の主権をめぐる米中戦争のリスクは、1949年に国共内戦に敗れた蒋介石が台湾に逃れて以来、かつてないほど高まっている。

戦争が迫れば、アメリカは恐らく以下のような戦略を取るだろう。

2.アメリカは「曖昧さ」と「威嚇」で牽制

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アメリカは台湾に最新鋭兵器を与えて自衛力強化を図る ANN WANG―REUTERS

まず「曖昧さ」で中国に侵攻を思いとどまらせようとするはずだ。

アメリカは中国の侵略から台湾を守るために武力を行使するかどうか、50年近くにわたって「戦略的曖昧さ」を維持してきた。

だが、習政権下で中国の軍事力と台湾に対する政治的・軍事的圧力が高まるにつれて、曖昧さは薄れつつある。

ジョー・バイデン前大統領は2021年、CNNが企画した住民対話集会で、中国が台湾を攻撃した場合、アメリカは台湾を軍事的に支援する「義務」があると明言。米中双方が「明確さ」を増すにつれて危険も増大している。

次は「ヤマアラシ戦略」。バイデンほど露骨ではないが、ドナルド・トランプ大統領も中国に侵攻を思いとどまらせる最善策として台湾への軍事援助を強調してきた。

これを具現化したのが今年5月の超党派の「ヤマアラシ法案」だ。

台湾に「自衛に必要なもの」を提供し、中国に侵攻のツケが高すぎると思わせるのが狙いだ。

特に中国の侵攻艦隊を壊滅させるため無人機、機雷、ミサイルなど陸上からの火力を優先する。だが「ヤマアラシ戦略」の成否は最終的には台湾の戦意に懸かっている。

それでも駄目なら、アメリカの計画立案者が懸念するとおり、アメリカやほとんどの民主主義国は、台湾侵攻を思いとどまらせようと中国に厳しい制裁を科すに違いない。

しかし制裁によって中国が政策を変えることはなく、世界経済を崩壊させるだけになりかねない。

説得に失敗して中国が侵攻に踏み切れば、米軍は中国軍の台湾海峡侵入阻止を軸とする戦略で、侵攻が成功しないようにする公算が大きい。

戦闘がエスカレートして核兵器の使用に至るリスクを最小限にするため、敵の本土を攻撃する可能性は低いだろう。

台湾侵攻の出発点となる港に対する攻撃は、台湾に任せる可能性が高い。今年5月の世論調査では米国民の約63.8%が、米軍の台湾防衛関与を支持すると回答した。

3.有事シナリオ、日本も避けられぬ渦中へ

戦略的一貫性を欠くトランプの出方は、より不透明だ。威嚇とは裏腹に、トランプはアメリカの他国への軍事的関与を嫌う。

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【note限定公開記事】トランプ再登場で米中はどう動くか──台湾侵攻シナリオが示す未来


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