最新記事
ウクライナ戦争

ドンバスをロシアに譲れ、と言うトランプがわかっていない2つの重大な事実

Why Handing Donbas to Putin Would Be So Difficult for Ukraine

2025年8月20日(水)17時10分
エリー・クック、ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
ホワイトハウスでトランプと会談するウクライナのゼレンスキー大統領

プーチンの洗脳を解くのは容易ではない?―― ホワイトハウスでトランプと会談するウクライナのゼレンスキー大統領(8月18日) Sipa USA via Reuters Connect

<ウクライナ東部のドンバスをロシアに譲るという提案が波紋を呼んでいるが、そこは単なる領土ではなく、国家の存続に直結する防衛線でもある>

8月15日、米アラスカ州でドナルド・トランプ米大統領と会談したロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、ウクライナ戦争終結の条件として、ロシアと国境を接するウクライナ東部のドネツク州とルハンスク州、通称「ドンバス」地方をロシア領土とし、そのほかの地域では現状で前線を凍結するという条件を出したと言われる。トランプもロシアには勝てないのだから領土を渡して戦争を終結させるべきだと主張しているが、それは大きな間違いだ。

第一に、プーチンが欲しがっているドンバスはまだ持ち堪えられる。第二に、ドンバスを明け渡せばウクライナそのものが消滅しかねない。

ドンバス割譲の影響は政治社会にとどまらず、軍事的にもロシアのさらなる侵攻を許すことになりかねない悪手なのだ。


ウクライナは一貫して、ロシアに占領された領土を放棄しない立場を貫いてきた。憲法上も領土の割譲は認められない。

「この方針を曲げる者はいないし、曲げることもできない」と、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は今月初めに語った。「ウクライナ人は土地を占領者に差し出したりしない」

ドネツクとルハンスクの両州はどちらも工業地帯として知られ、ロシア語話者も多い。親ロシア派武装勢力の拠点だったこともあるが、ロシア侵攻の惨状を目の当たりにした今、住民はウクライナに残ることを望み、戦っている。

BAT
「より良い明日」の実現に向けて、スモークレスな世界の構築を共に
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

カナダ失業率、8月は7.1%に悪化 米関税で雇用や

ワールド

英副首相が辞任、後任にラミー外相 大幅内閣改造で挽

ワールド

EU、グーグルに34.5億ドル制裁金 「広告で自社

ワールド

FRB、9月大幅利下げ検討も 低調な雇用統計受け=
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    眠らないと脳にゴミがたまる...「脳を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    「あのホラー映画が現実に...」カヤック中の男性に接近する「超巨大生物」の姿に恐怖と驚きの声「手を仕舞って!」
  • 3
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 4
    「生きられない」と生後数日で手放された2本脚のダ…
  • 5
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...…
  • 6
    「ディズニー映画そのまま...」まさかの動物の友情を…
  • 7
    「よく眠る人が長生き」は本当なのか?...「睡眠障害…
  • 8
    謎のセレブ中国人ヤン・ランランの正体は「天竜人」?
  • 9
    キリストを包んだとされる「聖骸布」はやはり偽物だ…
  • 10
    世論が望まぬ「石破おろし」で盛り上がる自民党...次…
  • 1
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 2
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 3
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 4
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...…
  • 5
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
  • 6
    眠らないと脳にゴミがたまる...「脳を守る」3つの習…
  • 7
    「あのホラー映画が現実に...」カヤック中の男性に接…
  • 8
    「よく眠る人が長生き」は本当なのか?...「睡眠障害…
  • 9
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 10
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 3
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 4
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 5
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 6
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 7
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 10
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中