「15対0の完敗」──EUは安全保障を米国に依存する日本のように振る舞った
THE TRUMPING OF EUROPE
多くのカードを持っていたEUは、アメリカから圧力を受けているG7の日本やカナダと連携すれば、立場を強化できたはずだ。また、「反威圧措置(ACI)」という強力なカードもあった。
これは「第三国が、貿易や投資に影響を及ぼす特定の措置を講じるようEUまたはその加盟国に圧力をかけようとする状況」に備えて設置されたもので、今まさにそれが起きている。
しかし、フォンデアライエンは当初から欧州委員会の専門家の助言を無視し、抑止策としてACIを発動することさえ拒否した。もし発動していれば、中国との貿易戦争も展開しているアメリカはその脅威を軽視しなかったはずだ。
中国はEUとは異なり、アメリカのエスカレーションに対して報復措置を講じ、その結果、トランプ政権の財務長官が「対中高関税は持続不可能」と表現する事態に陥っている。
EUはトランプに対処する上でパワーバランスを取ろうともしなかった。EUが中国のようにさらなるエスカレーションをいとわない姿勢を見せていれば、トランプははるかに弱い立場に置かれたはずだ。だがEUは、中国ではなく、アメリカのもう1つの主要貿易相手国で、安全保障を同国に依存する日本のように振る舞った。
その結果、今回の合意は大失敗に終わった。この合意は、今日の地政学的状況において、EUは結局アメリカの保護を失うことへの恐怖に突き動かされていることを裏付けている。いかに屈辱的であろうとも、アメリカとの連携を継続するほうが、不安定な独立よりも望ましいということだ。





